朝鮮半島西側の延坪(ヨンピョン)島に向けて、北朝鮮が砲弾を発射した事件への対応で、これまでの失点を取り戻したい菅政権。しかし、思わず漏れた本音をめぐって、野党が徹底追及している。菅首相は24日、「これは許し難い蛮行だと言わざるを得ません」と述べた。尖閣、北方領土と失態続きの中、今度こそ失敗が許されない菅外交。菅首相は24日、「韓国政府の立場を強く支持してまいります」との思いを李明博(イ・ミョンバク)大統領に電話で伝えた。さらに仙谷官房長官は、検討が進んでいた朝鮮学校の高校授業料無償化についても、見直しの可能性に言及した。
激変した国際情勢を受け、仙谷・馬淵両大臣らへの問責決議案を24日にも提出する構えだった自民党は、補正予算案採決前の提出を見送ることを決めた。自民党の谷垣総裁は「問責は事態を見ながら。衆参の国対委員長に判断してもらう」と述べた。しかし、この有事について、民主党幹部から「北朝鮮の砲撃は民主党にとって神風だ」と耳を疑うような発言もあった。
この発言に対し、自民党の石破政調会長は「なぜそんな発想しかできないのだ」と述べ、安倍元首相は「2人の兵士が亡くなっている。このことまで政局に利用しようとしている」と述べた。さらに、23日の菅首相の「報道で」との発言について、安倍元首相は「とんでもない危機管理」と述べ、小泉 進次郎議員は、「当事者意識がないのか」、「今回の事態は対岸の火事だけど、対岸の火事じゃない」と述べた。問責決議案の提出は当面見送られても、依然、野党の追及はやむことがなかった。その矛先は、政府の初動対応に向けられた。
また小泉議員は、菅首相の「情報収集に全力を挙げて。第2点は不測の事態に備えて、準備してほしい」との発言について、「この2点の発言の前に、北朝鮮を非難する言葉がないのがありえない」と述べた。さらに、菅首相の今回の事態をテレビで初めて知ったかのような発言。菅首相は23日、「韓国軍も応戦した報道があり、わたしにも(午後)3時半ごろ、連絡がありました」と述べていた。この発言について、周辺は「秘書官から第1報が入ったあとにテレビをつけたら、ニュースでやっていたため」と釈明している。
しかし、FNNが入手した資料には、首相への連絡体制に疑問点が浮かんだ。外務部門会議で松本議員は「(午後)3時すぎには、情報が入った時点で対応をスタートいたしまして」と述べた。その後、午後3時18分にオーストラリアにいる前原外相に報告され、その2分後には首相官邸に情報連絡室が設置された。菅首相には、さらにそのあと、官邸に連絡室が設置されてから10分もたって連絡があった。自民党の石破政調会長は「政権全体に緊張感に欠ける」と述べた。
この状況で仙谷大仙人の問責決議案を先送りしたことは妥当な措置だろうが、その原因となった北朝鮮の韓国砲撃を「神風」という感覚はもう政権の維持しか見えていないことの証明だろう。政府与党がこんな状態では何とも心もとない。北朝鮮は日本を射程に入れている弾道ミサイルを持っているので今回のことは他人事でも何でもない。
腰砕けの政府が統治するこの国は攻撃するにはもっとも容易い国だろう。1発でもミサイルが着弾すれば上から下までパニックになるだろう。軍に首根っこを押さえられた北朝鮮指導部は軍の強硬姿勢を受け入れざるを得ない。次の標的が日本にならない保証などどこにもない。危機管理というのは考え得る最悪の状態を想定して対策を立てないと意味がない。
前回の北朝鮮のミサイル発射時は日本海にイージス艦を、首都圏と東北にはパトリオットを展開させた。迎撃ミサイルを展開させてもすべてを迎撃できるわけではないが、相手に対する威圧にはなるだろうし、国家としての「何かをしたら黙ってはいないぞ」という意思表示にもなる。それが抑止力だろう。
一国の首相が、周辺の有事をテレビで知ったなどというのはもう国家を統べる資格もない。もしかしたら、もう相手にされていないんじゃないかと疑いたくもなる。朝鮮高校の学費無料化を止めても相手は痛くも痒くもない。決まり文句のように情報収集などと言っていてミサイルが飛んで来たらどうするつもりだろう。「今、ミサイルが日本に向かって飛んでいるという情報を収集しました。菅内閣はしっかりと仕事をしています」とでも胸を張るつもりだろうか。
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