処置室ではてきぱきと看護師にカーゴパンツを脱がされて傷を消毒されて麻酔を打たれて傷口が縫い合わされた。足の方は太い糸でしっかりと、腕は細い糸で細かく縫ったようだった。
「足の方はかなり深く切れています。しばらくは過激な動作を避けて安静にしてください。それから傷は消えないと思いますので承知しておいてください。腕の方はそれほど深くはないので完治すればさほど傷は目立たないと思います。」
処置が終わってから医者にそう言われて処置室を出た。血だらけのパンツはひざ下で切り離した。ファスナーでひざ下を切り離せるカーゴパンツはこんな時は便利だった。それから薬をもらって会計を済ませたが、保険が効かないとかでずい分な料金を請求された。これって誰が払ってくれるんだろう。そんなことを考えたらまたむかっ腹が立ってきた。
病院からは迎えに来ていた警察の車に乗って警察署に行った。そこには社長、弁護士、そして女土方が待っていた。僕は何よりも女土方の顔を素早く窺った。思った通り女土方は僕の無謀な行為に激怒している様子だった。変態男よりも僕は女土方の方がよほど怖かった。
車から降りると三人が待っている玄関の方へと歩いて行ったが、玄関先で待っている女土方の顔を見ると何となく足が進まなかった。僕と女土方の距離が数メートルまで近付くと女土方が僕の方へと歩いてきた。
「あ、あのね、偶然で、どうしようもなかったのよ、その・・」
僕は言い訳をしようと思ったが、しどろもどろの言葉しか口から出てこなかった。そこに女土方の平手打ちが飛んできた。この女に殴られるのはこれで何回目だろう。
「一体何を考えているのよ。みんながどんなに心配していると思っているの、ばか。」
「ごめんなさい。すみませんでした。」
僕は女土方に向かって深々と頭を下げた。女土方が本当に僕のことを心配しているのがその表情から読み取れたからだった。
「ちょっと落ち着いてください。」
警察官が女土方を制止するように僕たちの間に割って入った。
「大丈夫、いいんです。」
僕は間に割って入った警察官を押しのけて女土方を抱き寄せた。
「心配かけてごめんなさい。」
僕はもう一度女土方に謝った。女土方はその表情は緩めなかったが、僕を心配してくれているその気持ちは痛いほど伝わってきた。確かに僕のやったことは軽はずみなことだったのかもしれない。
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