ロシアのラブロフ外相は2日、訪問先のオスロで記者会見し、メドベージェフ大統領が北方領土の歯舞群島と色丹島への訪問を計画していることを明らかにした。ロシア大統領が両島を訪問すれば、平和条約締結後の歯舞・色丹の2島引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言の立場を踏み越え、日ロ領土交渉に根本的な変更を迫る可能性もある。インタファクス通信によると、プリホチコ大統領補佐官も同日、「地域が直面する問題や課題を詳細に知るため、ロシア大統領が他のクリール諸島を訪れる可能性がある」と述べた。 

ロシアのメドベージェフ大統領が日本の北方領土・国後島訪問を強行したことを受け、前原外相は河野駐露大使の一時帰国を決め、ロシア政府に抗議の意思を示した。だが、鼻息が荒いのは前原氏だけ。仙谷由人官房長官ら政府首脳陣はなお波風立てることを嫌い、日露首脳会談の実現に淡い期待を抱き続ける。沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件後の「外交敗戦」の愚をまた繰り返すつもりか。菅直人首相の頭の中は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でいっぱいだ。議長国としてひのき舞台を成功裏に収めたい。それだけにメドベージェフ大統領との首脳会談は中国の胡錦濤国家主席との会談に勝るとも劣らない重要なイベントなのだ。仙谷氏は2日の記者会見で大統領との会談について「当方は予定通りです」と語り、実現に自信を見せた。

前原氏の言動はこれと微妙に温度差がある。2日の記者会見では「領土問題は決着を付けないといけない。ロシアに申すべきことは申す」と断じ、首脳会談については「行われるかどうかはまだ決まっていない」とにべもなかった。松本外務副大臣も1日の会見で首脳会談見送りも排除しない考えを示している。前原氏らは大統領の国後島訪問を棚上げにしたままで首脳会談を行えば、ロシアの不当な実効支配を追認することになりかねないと危惧しているのだ。前原氏は、昨年10月、国交相兼沖縄・北方対策担当相として上から北方領土を視察した際も「北方領土は終戦のどさくさに紛れて(旧ソ連が)不法占拠した」と発言。ロシア側は激しく反発した。こういう経緯を考えると、ロシア側は、前原氏が外相である今こそ日本政府に「踏み絵」を迫るべきだと判断したフシがある。

だが、しなやかでしたたかな「柳腰外交」を身上とする首相官邸に前原氏の考えへの理解はない。首脳会談の内容いかんにかかわらず、こやかに握手を交わすことこそが友好と協調の証しだと考えているようだ。だが、仙谷氏らの「事なかれ主義」は周辺国に見透かされている。 「過去数十年間でかつてないほど日本側の動きがエスカレートし、中日関係を大きく傷つけている。しかるべき条件と雰囲気づくりに努めなければいけない」。来日中の中国の唐家●(=王へんに旋)元国務委員は2日、有識者による「新日中友好21世紀委員会」中国側座長として外務省で記者会見し、衝突事件での日本の対応を批判した。ロシアと足並みをそろえて日本政府を屈服させようという思惑がにじむ。

 前原氏は、中国側がハノイで菅首相と温家宝首相の会談を拒んだことについても「なぜ首脳会談がなくなったのか、理解しかねる」と不満を表明した。だが、理不尽な圧力に正面から抵抗する前原氏への中露包囲網はジワジワと縮まっている。外相の任命権者である菅首相がどんな態度で両国に臨むか。もはやこの一点だけが問われている。
 
前原氏がいくら力んでみても島を実効支配しているのはロシアで、それが返さないというのだから島は返ってはこないだろう。今、手の中にあるものをしっかりと治めていかないとみんなはぎ取られてしまう。当面はどこに力点を置いて対応していけばいいのか、それをしっかりと認識すべきだろう。日米同盟を基軸に東シナ海、南シナ海でお隣の大国の圧力を受けている国と連携して自国の利益を確保していくのが得策だろう。
 
インド、ベトナム、マレーシア、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、オーストラリア、台湾、韓国、それぞれ利益は異なるが、地道な交流でラインを作っていけば道は開けるかもしれない。そのためには日本自身が領土を守る意思を世界に示すべきで、それはやはり軍事力と経済力の強化に他ならないだろう。もしもこのままずるずると柳腰対応で尖閣諸島を中国に取られたら日本の国際的な地位は垂直降下で急落するだろう。1億を超える国民と安定した社会と高度な技術と世界でもトップクラスの経済力を持った大国なのだからもう少し大国としての矜持を持つべきだろう。
 
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