中国外務省の姜瑜副報道局長は21日の定例会見で、尖閣諸島(中国名・釣魚島)での衝突事故について「中国漁船が巡視船にぶつけられた」と主張し、海上保安庁に対し事故の模様を撮影したビデオを「最初から最後まで一部始終」公表するよう求めた。事故後、中国メディアは巡視船側が漁船にぶつかったと報道しているが、中国政府として公式に事故の事実関係を主張したのは初めて。中国側からビデオ公開を求めることで主張の正しさを印象づける思惑もありそうだ。姜副局長は「中国漁船が釣魚島付近海域で正常操業中、日本の巡視船多数に囲まれ、追跡され、妨害され、ぶつけられ、損害を受けた」と主張し、日本側に船長の即時無条件釈放を改めて要求した。「ビデオ公開が日中の争いを解決する方法の一つとは思わないか」との質問に副局長は、「日本側のビデオが何時間あり、最初から最後まで一部始終が公表されるかどうかは分からない」と述べ、都合のいい部分だけ公表しないよう日本側をけん制した。
 
仙谷由人官房長官は21日の記者会見で、沖縄県・尖閣諸島近くでの中国漁船と日本の海上保安庁巡視船の衝突事件に関し、衝突の様子を撮影した海上保安庁のビデオについて「捜査が決着していない時に証拠をオープンにするのは原則としてあり得ない」と述べ、現時点での公開に慎重な考えを示した。その上で「事件の処分がなされた段階で、証拠開示の公益性があるかないか検察庁の判断にお任せする。政府から促すことも当然ある」と語った。これに関連し、菅直人首相は21日、官邸で記者団に対し「戦略的互恵関係を深める考え方に基づき、冷静に対応することが必要だ」と指摘。北沢俊美防衛相は同日の会見で「漁船がこちらに衝突してきたと中国政府、国民に正確に伝わっているか疑問だ。正確に伝える努力が日本として必要だろう」と語った。
 
常識的に考えて海保の船が漁船に船体をぶつけることはありえないだろう。海保巡視船の損傷部位も右舷後方であの場所は船を相手の近くまで持って行って尻を振らないと当たらない。自船の機関部に浸水を生じる可能性もあり、敢えて選んで難しい方法でぶつける場所でもない。ビデオ映像を公開しても「都合のいいところだけを公開した」などと、また言いがかりをつけてくるのだろうから、淡々と法的手続きを進めるのがいいのだろう。中国も国内事情や領土・領海拡張政策でここは引けないのだろうし、日本にしても譲歩は船長の釈放という完全敗北しかないのでこの選択もあり得ないだろう。
 
米国が言うように、中国は尖閣諸島の実効支配を機関決定した可能性があれば、その方針に従って行動した船長を救わないと国内的に極めてまずいことになるだろう。どっちも引くに引けないせめぎ合いはどこで決着するのだろうか。最悪は武力衝突だろうが、その可能性がないとは言えない。日本側が船長を略式罰金で退去強制とせず、正式に起訴した場合は、判決自体は執行猶予だろうが、裁判の期間は勾留されることになる。その辺りで中国側が実効支配へと武力行使に踏み切る可能性がないとは言えない。
 
船長が事実を認めて謝罪し、その時点で略式命令、又は起訴猶予で釈放となれば終息の可能性はあるが、それだと一貫して日本を非難し続けた中国の面子は丸つぶれだろうからこれもなかなか難しい。いずれ米国辺りが仲裁に乗り出すのだろうか、しかし、中国は面子を重んじる国だから簡単には妥協はしないだろう。日本としては国内法の手続きを進めるとともに、やはり日本の主張が正当であることをもっと国際社会に主張すべきだろう。その意味では映像の公開というのも効果があるだろう。
 
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