それからしばらくして僕が啖呵を切ったつけはすぐに押し寄せて来た。僕の社内メールボックスに何通もメールが着信した。
要するに「どのようにでも責任を取るからあなたのすべてを知りたい。」という内容だった。社内メールボックスと言ってもインターネットとも接続されているので個人メールだと誰から寄せられたのか分からない。それでも中にはきちんと名前を名乗って連絡先まで添えてくる律儀な人もいたが。
しかし、いくらどのように責任を取っていただいてもこの身を男どもの前にさらけ出すわけには行かない。女土方のことも大きな理由の一つだが、何よりも僕は男なので男を受け入れることは出来ないんだ。
それに僕は覚悟を決めて来いとは言ったけど具体的のどのようにとは言っていないのでその内容については選択権を留保しているつもりだが。
「やっぱり来たのね。心配はしていたんだけど。」
女土方がモニターをのぞき込んでそう言った。
「こんなことになるんじゃないかと思っていたんだけど、やっぱりね。」
「大丈夫よ、こんなもの。相手にしなければ良いんだから。受けるか受けないかの選択権は私にあるのよ。そうでしょう。相手がはっきりしているものにはお断りの返事を返信するわ。私はあなただけよ。」
僕は女土方の方を振り返ると軽く腰を抱いた。
「ここは職場です。個人的な感情を顕わにするのは自重してください。」
テキストエディターのお姉さんが、処置なしと言った表情で僕たちに向かって言った。
「職場の同僚として励まし合っているのよ。」
僕はテキストエディターのお姉さんに向かってそう言うと、彼女は処置なしと言った風で首をすくめて見せた。
「ねえ、ネットって言ったらさあ、この間、回線を切り替えたらダウンロードが早くなって使いやすくなったわよねえ。便利だわ、本当に。」
クレヨンがいきなり何の脈絡もなくネットの話をし始めた。こいつはネットでファッションだのエステだの旅行だのと遊びのことばかり調べていて仕事には何ら影響はないのだが、確かにネット回線を切り替えてからダウンロードの速度は速くなった。
「あんたの頭がもう少し早く動くようになれば仕事ももうちょっと進むんだろうけど、あんたは遊ぶことばかりでしょう。インターネットを使うのは。」
「そう言えば回線の切り替え工事をしたわよね。」
女土方が何かを思い出そうとするように天井を向いた。ネット回線の工事、そう言えばあの盗撮データは一旦サーバーに映像を貯めて回線を使って送信していた。
「あいつだ、あのネット配線工事の時にいた工事責任者のあいつだ。」
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