「ちょっとあんた、今何て言ったの。私の体が見たければ何時でも見せてあげるわ。その代わりそれなりの覚悟を決めて来ることね。半端な興味本位では痛い目を見るかもよ。どうするの。」
 
僕は元々男だから男の好奇心と言うのは良く分かる。大体、普通の女はこんなことは言わないだろう。そんなことは百も承知している。
 
これでまた波風を立てることも。でもこのことには癇に触ってどうしようもないものがあるのでつい啖呵を切ってしまった。
 
『おお、面白い。こっちも腹を括るから是非御供覧賜りたい。』
そんなことを言われたらこっちも頭を抱えてしまうかも知れないが、まず絶対にそれだけのことを言える勇気のあるのはいないので強気に出ることが出来るのだった。
 
言われた方はまさかと思っていたのが、突然啖呵を切られて凍りついたように動かなくなった。
 
「さあ、どうなの。見たければ見せてあげると言っているのよ。見たいと言ったのだから願ったり叶ったりでしょう。」
 
「い、いや、誰もそんなことは、・・言ってはいない・・。」
 
「そう、じゃあ私の聞き違えかしらね。でもね、言っておくけどこのことでは本当に苦しんでいる子達がいるのよ。
 
あなたたちはそんな被害を受けた子達の苦しみをどうして理解しようとしないで下品な興味本位でしか見ないの。あなたたちも紳士なら少しは考えなさい。」
 
男たちは僕が言い終わるのが早いかそそくさとその場を立ち去った。これでまた何かしら僕の噂が立つだろう。それはそれで構わない。
 
食事を終わって部屋に戻るとさっきの男達の上司が待っていた。またどうせさっきのことでろくでもないことを言いに来たのだろう。
 
「さっき、うちの若いのが盗撮の犯人扱いされたと聞いたが、一体どういうことなのか訳を聞きたい。
 
場合によってはこちらにも考えがある。うちの若いのも盗撮犯人扱いされては収まらないだろう。あんた達も被害を受けて気の毒とは思うがそれとこれとは別の問題だ。
 
社長のお気に入りだと思って少しばかり天狗さんになっちゃあいないか。このことは役員会に上程しても構わないんだぞ」
 
ほら、お出でなさった。そんなことだろうと思った。僕は早速これに反論しようとしたところ女土方が僕よりも先に噛み付いた。
 
「社長に気に入られているからなんてそんなことはありません。社長もそんなことで贔屓をするような人ではないことは部長も十分に承知されているでしょう。
 
彼女が言ったのは盗撮なんて卑劣な犯罪の被害に遭った女性を単なる下品な好奇心でその感情を逆なでするような行為があったからです。
 
佐山さんもそのことを注意したのであってあの人たちを盗撮の犯人呼ばわりしたわけではありません。それはここにいる全員が証人です。」
 
ここにいる全員と言っても僕と女土方を除けばテキストエディターのお姉さんとクレヨンだが、まあ証人は頭数も大事だから。
 
「部長はそうおっしゃるようですが、それならばどうしてその侮辱されたと言う人たちをお連れにならないんですか。どうぞ、その人たちをここに呼んでください。そして何があったのかきちんと話させてください。」
 
こういう時の女土方は正直怖い。正しいと思うことを主張する時の女土方は誰が何を言っても揺るがない気迫に満ちている。その気迫に気圧されたのか、部長様も言葉に詰まったように答えに窮していた。
 
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