しばらくすると警察が来たと連絡があった。僕は総務課長と一緒に警察に現場を見せて隠しカメラの回収について説明をして最後に例のサイトを開いて見せた。
警察官は色々メモをしたり、カメラが置かれていた場所を写真に撮ったりサイトについてURLやサイトの名前を控えたりした後に回収したカメラと写真を持って行った。もちろん例の『これこれの品物を提出します』と言うくどい書類を書かされて。もっとも今回は総務課長が書いたのだが、・・。
「それで被害を申告されますか。場所が女子トイレなので一応建造物侵入と言うことになると思いますが、・・・。ただし、実際に被疑者を特定して検挙すると言うのはなかなか難しいと思いますが。」
「こちらの弁護士と相談して後日告訴状をお持ちします。担当の方の名前を教えていただけますか。」
総務課長がそう言うと警察官は一瞬嫌な顔をした。弁護士などが入るとあれこれ言われて面倒だからだろうか。
警察が帰ってから女子トイレの使用禁止は解除された。それでもみんな使うのを躊躇ってトイレの前で溜まっていたり外に出るものまでいた。盗撮なんて危険性はどこでも同じだろうし、却ってレストランやデパートのトイレの方が危ないように思うのだが、事実を見せつけられるとそんなものなのかも知れない。
僕は構わずに使っていたが、トイレよりもすれ違う社員の目線の方が何となく気になった。こんな噂の広がるのはきっとずい分早いのだろう。
夜、家に帰って食事を済ませて部屋で寛いでいると女土方がそれとなく声をかけてきた。
「ねえ、大丈夫、あんなことがあって気持ちの方が。不安とか動揺があったら何でも言ってね。」
女土方は本当に僕のことを心配してくれているらしい。本当に心の底から優しい女だ、この女は。
「大丈夫よ、あんなことくらい。私だと言う証拠もないし、違うと言えばそれまででしょう。結婚も離婚もして男を知らないわけでもないし、それにあの時の方が恥かしいかもね、大きく脚を開くから、ね。」
本当のところ僕は男を知らない。当たり前のことだが、そんなものを知っていたら大変なことだ。今回のことどころの騒ぎじゃない。
「あなたは本当に強い人だわ。私だったら錯乱してしまうかも、あんな写真を公開されたら。ねえ、もう一つ聞いてもいいかな。昨日はどうしてあんなに激しく求めたの。私はどうして良いか戸惑ってしまったけど何か理由があるだろうと思って。その理由をちょっと聞いてみたくなったの。」
「そんな深い理由なんかないわ。あなたが好きだから。そしてあなたと一緒にいると心が安らいで落ち着くから。それが理由と言ったら納得してくれる。」
女土方は黙って頷くとはにかんだように微笑んだ。僕はその笑顔を見て嬉しくなってしまった。でも本当のことを言うと昨日あんなに興奮したのはサイトの写真のせいなのかも知れない。
僕の心の奥底にはちょっと危ない性癖が隠れているのかも知れない。本当のことは僕にも分からないが、・・。
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