トヨタの平成22年3月期連結営業黒字転換が現実味を帯びてきたという。もし実現すれば、世界同時不況後の自動車販売の低迷、大量リコールの続発にもかかわらず、2年ぶりに奇跡の復活を果たすことになる。

トヨタの救世主となったのは、昨年5月に発売したハイブリッド車(HV)「新型プリウス」だ。この車、発売と同時に予約が集中し、納車まで8カ月待ちという驚異の予約を獲得、中古車(走行距離10キロ未満)が新車の価格を上回る値が付いたらしい。今でも納車には約3カ月かかるという。

これ以外にも、「レクサス」の「HS250h」、そのトヨタブランドの「SAI(サイ)」も好調な売れ行きだそうだ。各車種とも国の新車買い替え補助やエコカー減税といった経済対策をフルに生かした販売を心がけたと言う。

初代プリウス自体は、元々、コンセプトカーとして計画されたものらしいが、それを21世紀までに販売できるようにと、急きょ計画を変更して、想像を絶する苦労と試行錯誤の末に市販車として世に出したのだと言う。どこぞの大国が、これを分解して同じものを組み立てようとしたが、どうして動くのかも分からなかったそうだから、先端技術の効果というのは偉大なものだ。「2番じゃいけないのか」などというどこぞの政権政党の政治家様に聞かせてやりたい。

今期、営業黒字に転換できたとすれば、それはトヨタの先端技術とともに、お家芸ともいえるコスト削減が利益率を底上げしたのだろう。かつてダイハツ、日野と合わせ、トヨタはグループで年間世界生産台数1千万台に手が届きそうなところまで成長した。

しかし、世界同時不況で市場環境が一変し、21年はグループ3社の年間生産台数が723万台にまで落ち込んだ。そこでトヨタは700万台を切っても利益が出る体質への転換を最重要課題に部品の共通化と軽量化を徹底、部品会社などと一体となり、コスト削減に、グループの総力をあげて取り組んできたという。

新型プリウスの価格が、破格の205万円からという設定ができたのも、コスト削減の努力があってこその成果だろう。企業収益が減少する中、残業自粛、広告宣伝費のカット、新規設備投資の見送りなど、次々と固定費削減に努め、さらに、トヨタ名古屋オフィス内のトイレの温風機は1年以上、使用中止状態だという。その結果、正規雇用には手をつけずに、21年度は1兆円を超える規模の緊急収益改善が実現できそうだという。

このような一連の徹底したコスト削減により、22年3月期連結営業赤字予想は、昨年5月の8500億円から8月には7500億円、11月には3500億円と縮まり、ついに今年2月には200億円にまで縮小した。

米国でのフロアマット問題に端を発した一連の品質問題はトヨタには大きな打撃だっただろうが、業績への影響は、2月時点で1800億円程度と予測、その後も大きく増えてはいないという。

4月28日までに発表されたトヨタ系主要13社の22年3月期連結決算は、前期比5社増の12社が黒字を確保したという。もしかすると、トヨタ本体も・・・、この2年間、苦闘の道を歩んできたトヨタの22年3月連結決算は5月11日午後3時に発表される。

トヨタと言うのは、この日本で、本当に強かでしなやかな対応ができる数少ない企業だろうと思う。目標設定も目標に至る対策も危機管理も支離滅裂な政権与党の政治家の先生方も、自分の権力しか見えない野党の先生方も、派遣社員にでもなってトヨタでしっかりと研修でもして来たらどうだろうか。

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