「何ていうサイトなの、それって。」

「『虎の穴・虎穴に入らずんば虎子を得ず。』確かそんな名前だったと思う。」

語句検索で女土方が言った名前を打ち込むとそのサイトはすぐにヒットした。

『華麗なOL達の密やかな安息』

そんなタイトルの下に業種別にジャンルが並んでいた。この野郎、どうもかなり手広く手を染めているようだった。気がつくと何時の間にか、クレヨンが後から覗き込んでいた。

僕は試しに小売業と言うのを開いてみた。そこはデパートやスーパーのようだった。開くと『都内大手スーパー』『某有名デパート』などのサブタイトルと共にサムネールがずらりと並んでいる。それを見ただけで相当にやばい画像ばかりというのが分かった。

「これってけっこう危ないわね。きわどいのが写るように仕掛けも手が込んでいるわ。」

僕は女土方を振り返ったが、女土方はじっと俯いたまま顔を上げなかった。僕はこれ以上画像を開いて確認すべきかどうかちょっと迷っているといきなりクレヨンが大声を上げた。

「やだ、どうしてこんなのが出ているの。信じられない。」

あまりの頓狂な声にぎくっとして振り返った。やかましい奴だ。信じられないのはお前の脳味噌の構造だ。馬鹿なサルは放っておいてさらに画面をスクロールしていくと「教育・出版」というジャンルが目に入った。

その瞬間何だか嫌な予感がしたが、ここまで来たら確認しないわけには行かないだろう。そこに掲示されているサムネイルを見て行くと嫌な予感は的中した。

『若いとは言えないが、鍛え抜いた肉体はそそる・・・』

顔は写ってはいないが、その小さなサムネイルを見ただけでそれが誰なのか分かった。身に着けている衣服、そしてとてもここに書くわけにはいかない体の特徴など自分の体を見間違えるわけはない。

自分の体と言うのは厳密に言えば正しくはない。手を加えてやや改造はしているが、ここ数年使わしてもらっている佐山芳恵の体というのが正確なのだろうが。

『おのれ、こんなものを盗み写して公開しやがって。』

僕は何だか無性に腹が立ってきた。しかし、怖いもの見たさではないが、ここまで見たのなら最後まで見てやれと言う気になってサムネイルをクリックして画像を拡大してやった。

鮮明な画像ではないが、それなりに肝心なところはしっかり写っている。ちょうど立ち上がって下着を引き上げようとしているところだった。

「あっ。」
後でクレヨンが叫び声を上げた。

「これってあなたじゃないの。」
クレヨンが分かり切ったことを素っとん狂な声で言ったのが、むかついていた僕の癇に障った。

「そうよ、何か言いたいことでもあるの。」
別にクレヨンが悪いわけではないのだが、腹が立っている時に余計なことを言うので、その時クレヨンを振り返った顔がかなりきつい顔だったらしい。

クレヨンはハッとした顔で黙って後ずさりして女土方のそばに逃げて行った。

僕は画像をサムネイルに戻して他のを見てみたが、どうもこれはうちの女子と思うのが数人はいるようだった。それでも女土方やクレヨンは出ていないのが救いと言えば救いと言えた。

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