「あのね、うちの会社、盗撮されているみたいなの。トイレとか更衣室とか。

ある男性社員がネットサーフィンしていてたまたまそんな画像を見つけたらしいの。どうもうちの会社じゃないかって。

それが何で分かったのか私は聞いていないけど。男子社員は女子のトイレや更衣室には入らないから背景じゃなくて写真に写っている人で分かったんじゃないかって言うんだけど。

それが自分だとしても私以外の人でも絶対に許せないと思うわ。何とか確認したいと思うんだけどどうやって探したらいいのか分からないし、男子社員に聞くわけにもいかないし。どうすればいいのかなあ、こういうことって。」

盗撮なんて言われると女土方とは逆の好奇心が働いてしまうのは未だに健全な男の思考体系を維持しているからだろうか。

でも僕や女土方は年齢的にまず大丈夫だろう。もっとも僕の場合は自分の体なのかそうでないのかその辺りの感覚になかなか複雑なものがあるが。

「えぇぇぇ、それって本当なの。もしもそうだとしたら私なんか一番危ないじゃないの。いやだあ、そんなのって。卑怯よ。」

「確かにそうね、もしもネットにアップロードされるとしたらあんたなんか一番危ないかもねえ。

まあそこそこ若くてバカっ派手で目立つし、大体恥知らずだからトイレでも勢いよく捲り上げているだろうし。ばっちり写っているんじゃないの、あんたのが。」

「何をばかなことを言っているの、冗談じゃないのよ、これって。女性の尊厳にかかわる問題なのよ。私は許せないわ。こんなことをする人が。」

僕たちは女土方に厳しく叱られてちぢこまって沈黙してしまった。確かに女にしてみれば着替えはともかく排泄の現場などを写されて公開されたら尊厳を破壊されるにも等しいことだろう。

「どうやってそんなことをするんだろう。」
女土方が頭を抱えた。

「そんなの簡単じゃない。CCDカメラに発信機をつけて、画像がたまったら送信するようにプログラムしておけばいいのよ。携帯のカメラレンズほどの大きさだからどこにでも隠せるでしょう。

もっともいいアングルってあるんでしょうけど。防水仕様にして便器の中っていうのもあるらしいわよ。そうすれば絶好のアングルよねえ、そういう手合いって言うのはパラノイアが多いんだからどんなことでも考えるかもね。」

「何でそんなに詳しいのよ。」
僕は二人から疑惑の視線を向けられてしまった。

「別にそんなことトイレや更衣室じゃなくても盗撮、盗聴なんてありふれているらしいわよ。ネットで検索すればいくらでも出てくるわ。やり方も防ぎ方も。」

「どうしてそんなのを検索するのよ。益々怪しいわ。ビアンだから興味があるんじゃないの、女性の下着に。」

極めて失礼な言葉を吐いたクレヨンの口を思い切り摘んでやった。

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