そんなわけでいろいろ経験しているのでちょっとやそっとじゃ驚かないが、振り込め詐欺も慌てずに対応した方がいい。

大体借金してそれを返せなかったからって逮捕されることもあるまい。財産の差押えはあるかもしれないが。痴漢をして警察に捕まっても金を払えば釈放されるわけでもない。

刑罰と言うのは違法な行為に対する処罰だから、いくら金を積んでも一度やってしまったことは消すことは出来ない。

使い込みも同じことで金を返したからと言って罪が消えるわけでもない。状況をよく確認してから弁護士などに頼んでそれなりに必要な手を打っても手遅れと言うこともないだろう。

敵の狙いは非日常の緊急事態を目の前に叩きつけて慌てさせて、そこに出来る隙につけ込むことなのだから慌てては敵の思う壺にはまってしまう。

だから慌ててはいけないんだけど、身近な人が窮地に陥っていると聞かされれば何とかしないといけないと思うのは人情なのかもしれない。

そんなことを考えながら車を走らせているとあっという間に今は自宅となった金融王の豪邸に到着してしまった。僕はリモコンキーを取り出すと暗証番号を打ち込んで送信した。

すると戦車が体当たりしても壊れそうもないような厳つい門扉がゆっくりと動き出して道を開いた。その門をすり抜けて玄関の前に着く頃には門扉はしっかりと閉じていた。

女土方とクレヨンを玄関で下ろして車をガレージに納めると二人を追いかけて家の中に入った。お手伝いが出て来て女土方に、「お食事は、」と聞いていた。

「ありがとうございます。何か用意があるのなら軽くいただきます。」
女土方は丁寧に返事をしていたが、そう言えば今日の夕食はカレーだった。

「2人はもう食事は済ませたの。」
「食べたけどあの電話でいろいろ知恵を絞ったからお腹が空いちゃった。一緒に少し食べようかな。」
女土方が振り返るとクレヨンが無闇と元気な声で答えた。

お前が知恵を絞っただって。お前から知恵を出すなんて砂漠の砂を絞って水を取り出すよりも難しいだろう。

日本ブログ村へ(↓)

https://novel.blogmura.com/novel_long/