とにかくこんな奴を相手に慌てていても仕方がないので取り敢えず次の電話が来るのを待つことにした。電話はすぐにかかって来た。
「ねえ、電話よ、電話。どうしよう。どうしたらいいの。」
サルはまた取り乱し始めた。
「電話に出るのよ、電話に。そして相手が何と言うか落ち着いてよく聞くの、分かったわね。」
サルはこくこくと大きく何度も頷くと震える手で受話器を取った。
「はい、・・・・。」
僕はサルの後で様子を窺っていた。
「お父さん、お父さんね、大丈夫なの。ええ、お金が必要なのね。大丈夫よ、すぐに用意するから。」
こいつはどこまでサルなのだろうか。あれだけ言ったのに受話器を取ったとたんにもう感化されて敵の術にはまっている。
「バイク宅急便が来るのね、分かったわ。5百万を用意しておくから渡せばいいのね。そうすれば大丈夫なのね。」
僕は後から頭を小突いてやった。そして受話器を取り上げた。
「もしもし、」
いきなり相手が変ったことに驚いたのか、電話の向こうの相手はしばらく返事をしなかった。
「もしもし、お父さん、大丈夫なの。」
僕はわざと心配している風を装って聞いてやった。それに安心したのか相手はまた話し始めた。
「ああ、金は大丈夫だな。取りに行かせるから間違いなく渡してくれ。それで私も助かる。」
『何が私も助かるだ、助からなくていいから地獄に落ちろ。』
「お金は大丈夫よ、5百万くらいでいいの。すぐに用意するわ。ところで一体何があったの。訳を話して。」
訳を話してと言われて相手はちょっと口ごもった。組し易しと見ていたサルに替わって変なのが出て来たと思ったのかも知れない。
「だからさっき話したじゃないか。事業に投資したんだが、上手く行かなくて金が返せなくなった。それですぐに5百万必要なんだ。」
「さっき話したって誰に話したの。」
「え、・・・。」
「だから誰にそんな話をしたのよ。私は聞いていないわ。」
「誰にって、・・・。」
誰に話したのかと言われるとさすがに困るだろう。『俺だ、俺だ』と連呼してもそもそも赤の他人なのだから。
「誰に話したのよ。」
僕は畳み掛けるように聞いてやった。どうだ、思い知ったか。困るだろう。
「だから、美香に、・・。」
「そう、美香は驚いて慌てて何が何だか分からないみたいなの。もう一度、話して。何がどうしたのか。」
電話の向こうの相手はまたしばし沈黙した。もしかしたらここで諦めるか考えたのかも知れない。
「知り合いの事業に出資したんだが、投資先が事業に失敗してその金が回収出来なくなった。投資したのは別の取引先から預かった金でそれを返せないと訴えられて逮捕されるかも知れない。」
「それは大変だわ。ところで何の事業に投資したの。」
また電話の向こうではぐっと詰まったような音が聞こえた。
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「ねえ、電話よ、電話。どうしよう。どうしたらいいの。」
サルはまた取り乱し始めた。
「電話に出るのよ、電話に。そして相手が何と言うか落ち着いてよく聞くの、分かったわね。」
サルはこくこくと大きく何度も頷くと震える手で受話器を取った。
「はい、・・・・。」
僕はサルの後で様子を窺っていた。
「お父さん、お父さんね、大丈夫なの。ええ、お金が必要なのね。大丈夫よ、すぐに用意するから。」
こいつはどこまでサルなのだろうか。あれだけ言ったのに受話器を取ったとたんにもう感化されて敵の術にはまっている。
「バイク宅急便が来るのね、分かったわ。5百万を用意しておくから渡せばいいのね。そうすれば大丈夫なのね。」
僕は後から頭を小突いてやった。そして受話器を取り上げた。
「もしもし、」
いきなり相手が変ったことに驚いたのか、電話の向こうの相手はしばらく返事をしなかった。
「もしもし、お父さん、大丈夫なの。」
僕はわざと心配している風を装って聞いてやった。それに安心したのか相手はまた話し始めた。
「ああ、金は大丈夫だな。取りに行かせるから間違いなく渡してくれ。それで私も助かる。」
『何が私も助かるだ、助からなくていいから地獄に落ちろ。』
「お金は大丈夫よ、5百万くらいでいいの。すぐに用意するわ。ところで一体何があったの。訳を話して。」
訳を話してと言われて相手はちょっと口ごもった。組し易しと見ていたサルに替わって変なのが出て来たと思ったのかも知れない。
「だからさっき話したじゃないか。事業に投資したんだが、上手く行かなくて金が返せなくなった。それですぐに5百万必要なんだ。」
「さっき話したって誰に話したの。」
「え、・・・。」
「だから誰にそんな話をしたのよ。私は聞いていないわ。」
「誰にって、・・・。」
誰に話したのかと言われるとさすがに困るだろう。『俺だ、俺だ』と連呼してもそもそも赤の他人なのだから。
「誰に話したのよ。」
僕は畳み掛けるように聞いてやった。どうだ、思い知ったか。困るだろう。
「だから、美香に、・・。」
「そう、美香は驚いて慌てて何が何だか分からないみたいなの。もう一度、話して。何がどうしたのか。」
電話の向こうの相手はまたしばし沈黙した。もしかしたらここで諦めるか考えたのかも知れない。
「知り合いの事業に出資したんだが、投資先が事業に失敗してその金が回収出来なくなった。投資したのは別の取引先から預かった金でそれを返せないと訴えられて逮捕されるかも知れない。」
「それは大変だわ。ところで何の事業に投資したの。」
また電話の向こうではぐっと詰まったような音が聞こえた。
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