三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は28日午前10時21分、政府の情報収集衛星「光学3号機」を搭載したH2Aロケット16号機を、鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げた。約20分後、衛星を無事分離し、予定軌道への投入を確認。打ち上げは成功した。H2Aの打ち上げは7号機以降、10機連続の成功となった。

H2AはH2の2回連続打ち上げ失敗を教訓に改良を重ねた衛星打ち上げ用大型ロケットで現在はさらに大型化したH2Bの打ち上げにも成功している。世界でも屈指の安定した衛星打ち上げ用大型ロケットである。日本の衛星打ち上げロケットは米国からデルタロケットの技術を導入したNロケットで実用へと踏み出したが、この方式は最新ではないが、米国の技術を効率よく取得できるという利点はあったものの打ち上げの際には米国の許可が必要であるなど弊害も多々あったようだ。

ここで衛星打ち上げ技術を米国に依存していたら日本の今のロケット技術はなかっただろう。その後、すでに国産化が成功していた第2段用ロケットエンジンLE-5型や慣性誘導装置に続いて1段目のLE-7型液酸・液水ロケットエンジンや固体補助ロケットなどの国産化に成功、純国産ロケットの実用化へと踏み出した。しかしこのLE-7型エンジンの開発は難航し、開発試験中1名の死亡事故を含め、爆発・火災事故への対応など多くの技術的困難を克服する必要があったようだ。

H2の連続打ち上げ失敗では太平洋に沈んだロケットを引き上げて原因の究明を行うなど徹底した改良が行われ、その結果が現在のH2A・H2Bに生かされている。そのH2Aも6号機ではロケットの両脇にある固体ロケットブースタの片方が切り離せなかったことから打ち上げに失敗している。SRBのノズルが噴出する高熱ガスによって破孔を生じ、漏洩した燃焼ガスが導爆線を焼損したとのことであるが、これもはロケット開発に十分な開発資金が与えられなかったことがその原因で、「技術を知らない人間が金を出す」というような役人主導の科学技術政策の弱さが出た結果だとの批判もあるようだ。

いずれにしても高度先端技術の塊のようなロケット開発には長い時間と結果の不明瞭な投資が必要になる。それが是か非かは判断が分かれるところだろうが、日本のように資源を持たない国にはこうした簡単には到達出来ない高度先端技術への長期的な投資による技術蓄積がこの先不可欠で、その技術により国家の経済基盤を確立することが未来の日本の一つの姿になるだろう。

現在の日本のロケット技術は有人宇宙飛行を除いては世界でも最先端にある。しかしこれら最先端技術も一旦途絶えてしまえばそれを取り返すには厖大な時間と投資が必要になることは言うまでもない。技術レベルの維持は常に研究を継続し、資金を投下していく必要がある。評価されるのは1位のみ、研究開発の中断は休止ではなくこれまでの努力が無に帰してしまうのが先端技術開発である。

ちなみにH2Aの開発費は約1,200億円で、元になったH-IIロケットの開発費の2,700億円とあわせると約3,900億円だそうだ。この額は欧州宇宙機関(ESA)の主力ロケット、アリアン5シリーズの開発費である約1兆500億円の37%程度だそうだ。 打ち上げ費用は構成によって異なるが、約85億円~120億円程度で、H-IIロケットの140億円~190億円に比べると大幅に低減されている。

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