F/A-22に振られそうで混迷する航空自衛隊次期主力戦闘機だが、(2)で書いた、F-2(改)が次期戦闘機候補として日の目を見ることはないだろう。F-2はその初期不良を克服して当初要求された性能をほぼ満たす世界有数の戦闘攻撃機として完成した。対艦ミサイル4発を携行して戦闘行動半径830キロを飛翔する戦闘機は未だにこの世にはF-2しか存在しない。しかし、その性能自体が問題なのだ。

F-2は東西冷戦下で日本に向って侵攻して来る旧ソ連艦隊を洋上に迎え撃って撃破するために計画された。しかしF-2が完成した時にはその目標となる旧ソ連は崩壊して存在しなかった。(中国海軍がこれに代わる可能性はあるが、その頃にはF-2は間違いなく用廃になっているだろう)F-2は対艦ミサイル4発を搭載して洋上攻撃を行うためにかなり特化した戦闘攻撃機として設計されているのでマルチロール化が可能とは言っても自ずと限界がある。

そこに降って湧いたような北朝鮮のミサイル脅威に防衛予算はこれを迎撃するMDにほとんど食われてしまった。MD予算獲得の煽りを食った陸海空の主要装備は軒並み削られて戦闘機も260機まで削減された。数が限られているのなら最高のものを揃えたいというのは誰しも思うことで航空自衛隊もF/A-22を強く希望したが、機密保持の壁に阻まれて手も足も出なくなった。

F-15を8個飛行隊、F-2を3個飛行隊、そしてF-4EJ改を2個飛行隊ということで決着がついたが、140機を揃えるはずだったF-2は98機に、そして最終的には94機まで削減された。それは出来得る限り最高のもので主力戦闘機を賄いたいという航空自衛隊の強い希望なのだろう。

そこでF-2の性能に難癖をつけ始めた。機体が小型で改良の余地が少ない、兵器の塔裁量が少ない、性能の割には価格が高過ぎるなどなど文句をつければ切がない。確かに機体が小型と言うことは今後の発展の余地がないだろうが、電子装置などは小型化出来るのだから何とかなりそうなものだ。兵器の搭載量と言っても8トンもの各種兵器を搭載出来る能力があるのだからこれも特段問題にはなりそうもない。搭載する兵器の種類は用兵上の問題で飛行機の責任ではない。

しかし、大推力とは言っても単発の小型戦闘機であることから低空での格闘戦はともかく高空での性能はF-15に一歩譲るようだ。この点についてはユーロファイターにも及ばない。それと対艦攻撃に振ったAPG1の性能にも制空にはやや難があるようだ。エンジンを装換してFCSを改良する手間と金をかけるなら新しいものが欲しいというのが本音だろう。

炭素繊維で一体成形した主翼も強度が足りずに再設計をして必要な強度を保とうとしたところ、予算がオーバーするからと金属で補強したので重量が嵩み、エンジンの負担を増したようだ。釣竿じゃないんだからいくら炭素繊維で補強してもプラスチックで飛行機の翼が作れるはずがないと言った航空自衛隊の幹部もいたそうだが、それでもあの配線ミスによる墜落事故の映像を見ると上昇しようとした後、急に頭を下げて何度も滑走路に機体を叩きつけているのに機体には目立った損傷はなく修理も可能と言うことなので相当に丈夫に出来ているようだ。

F-2は決して悪い戦闘機ではないが、元が支援戦闘機として設計されているので余程のことがない限り航空自衛隊はこれを主力戦闘機に格上げして使用することはないだろう。今開発が行われているF-2のマルチロール化もあくまでも主力を補完する戦闘機として使用するためで今後この戦闘機を主力戦闘機に格上げするためではないだろう。

F-2はF-16やF/A-18CDなどの戦闘機を空戦で圧倒する能力を持った開発当時としてはそれなりに優れた戦闘機ではあったが、日本の用兵側や技術陣の経験不足から戦闘機をシステムとして見た場合にやや時代にそぐわなかった感があり、何よりも政治に翻弄された運のない戦闘機だったのかも知れない。

それで次の戦闘機は、F/A-22の対日輸出が解禁されればその高額な価格や輸出用の簡易型であったとしても文句なしにこれに決定だろうが、禁輸が解除されない場合はどうなるだろう。そうなると本命はF-15FX、対抗がユーロファイターというところだろうが、F-15FX又はF-15SE(これは初飛行が2010年第1四半期と言うことで選定に間に合わない可能性があるという)が最も妥当かつ無難な選択ではないだろうか。40機程度の導入なら完成機を購入又はノックダウンで導入して三菱重工にはATD-Xで頑張ってもらうというのも一つの選択肢ではないだろうか。それでも実際にはどのような決定になるのか興味は尽きない。

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