政府は15日、国連安全保障理事会で北朝鮮に出入りする船舶の貨物検査(臨検)を要請する制裁決議が採択されたことを受け、貨物検査の実施主体を原則として海上保安庁とする内容の特別措置法の骨子を週明けに与党に提示する方針を決めた。実施主体を海保とするのは、公明党や防衛省が自衛隊による公海での検査に難色を示していることや北朝鮮の反発に配慮したためで、表向きは「軍」ではなく「警察」活動を前面に出す必要があると判断した。

また政府は16日の持ち回り閣議で、2度目の核実験を強行した北朝鮮に対する日本独自の追加制裁措置を決定した。輸出の全面禁止と人的往来の規制が柱。既に北朝鮮からの輸入を全面禁止しており、今回の追加措置で北朝鮮との貿易がストップする。北朝鮮への輸出は、ぜいたく品や大量破壊兵器関連物資をこれまでも禁止しているが、国連安全保障理事会の決議採択を受けてさらに制裁を強化した。

政府は上記のように対北朝鮮制裁の内容を定めたようだ。相も変わらず党利党略に配慮した腰の引けた対応となっているが、
  ○ 全面禁輸ということは戦争半歩手前の対応であること
  ○ 船舶の臨検と言うことはもうほとんど戦闘行為に等しいこと
この2点を承知していて、なおこのような対応を可とするのかと言うことだ。65年前に日本は米国の対日禁輸政策に反発して開戦に至った。物資の流入を止めるということはその国に対して、「死ね」と言っているのと同じことだ。

北朝鮮は、「船舶臨検に対しては敵対行為と見なし、武力で対応する」と言っているが、さすがの北朝鮮もこれだけは正しい言い分である。物資の流入を止めるということは爆弾を投下したり砲弾を撃ち込むのと変わらないことになる。

前回の弾道弾発射の際は北朝鮮の正面に立って構えるのは米国や韓国ではなく間違いなく日本だった。自宅でテレビを見ていた我々はSM3やPAC3が当るかどうか、北朝鮮のミサイルがまともに飛ぶかどうかなど興味本位で見ていたが、現場で対応していた自衛官はほとんど臨戦態勢の極限の緊張を強いられた数日間だっただろう。

今回船舶検査の実施を海上保安庁に主管させるというが、海上保安庁は警察機関で軍隊ではない。巡視船には砲が装備されているが、40ミリ以下の小口径自動砲(機関銃)で射程も威力も小さい。しかも船体は商船構造で対弾性もなければ水密防水機能もないに等しい。しかし相手は間違いなく北朝鮮正規軍と言うことになる。そんなことを与党間の政策の綱引きで担わされる海上保安庁はたまったものではない。

さらにそのような対北朝鮮制裁を推し進めた時に相手からの報復を受けたらそれにどう対応するのかその辺はしっかりと決まっているのだろうか。周辺国のうち北朝鮮にとって一番手を出し易いのは間違いなく日本だろう。その時、米韓が合同で日本を援助してくれるという保障はない。場合によってはあの強かな北朝鮮のことだから日本だけを標的に他国が手を出し難いような状況を作り出して攻撃をしてくるかも知れない。

政府はその時どうするのか、もっとも今の政府は秋には倒れて民主党政権に変わっているだろうが、民主党は国連主導と言う空虚な美辞麗句を掲げてしまったのでさらに制裁決議の実行をせざるを得ないだろう。福祉も社会保障も命あってこそなのだろうが、高速道路が1千円だの無料だの、定額給付金の効果がどうだの、日本郵政社長の椅子を守るために大臣の首を切ったのが良いの悪いの、党利党略に目がくらんで目先の利益に走ってそんな枝葉なことばかりに拘って、本当に北朝鮮のミサイルが1発でも降って来たらこの国は一体どう対応するというのだろう。

民主党もせいぜい2年も持たないだろうが、日本の政治家達は戦後の日本が経験したことのない軍事的緊張状態の中でこの未曾有の危機にどう対応しようと言うのだろう。こんな時代にどうにもならないような政治家ばかり国のリーダーに頂かなければならないこの国の国民こそ良い面の皮なのかも知れない。
今回の選挙は高速道路がただになるだの消費税の増税がどうなるだの年金や社会保障がどうなるだのそんな暮らし向きのことばかりが争点になっているが、それと同時に「座して死を待つ良い戦うか、命を懸けても平和を唱えるか」そんな決断も含まれているかも知れない。前面禁輸政策、船舶の臨検はそれ自体戦闘行為と変わらないことを忘れてはいけない。

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