三菱重工といえば日本を代表する重機械メーカーで作っているものが工業プラント、大型船舶、航空機、ロケットなど大きなものが多いので単純に大きな企業かと思っていたが、連結総売上では日産の3分の1、ホンダの4分の1、トヨタの8分の1で発行株式の総額についてもトヨタの10分の1ほどしかない企業だったことに最近初めて気がついた。まあ無知と言えば確かのそのとおりで何とも言い訳の仕様もないのだが逆に言えば自動車産業というものがそれだけ規模が大きく日本の産業を支えていると言っても良いのだろう。

しかしその自動車産業にしても大きな転換期にあると言っても良いだろう。その一つの要因は、地球温暖化によるエネルギー転換問題で自動車もこれまでのように化石燃料だけに依存して存続することが出来なくなったこと、そしてもう一つは、絶頂期にある日本の自動車産業だが、この先10年、20年後には中国、ロシア、インド、ブラジル、韓国など新興国の自動車産業の追撃を受け、現在の米国のようにかなり厳しい状態に陥ることは間違いないと言うことだ。

エネルギー問題についてはいろいろ取り沙汰されてはいるが、当面はハイブリッドや車体の小型化、軽量化などで凌ぐにしてもバイオ燃料は穀物価格の高騰を招き、燃料電池や水素エンジンにしても原料の水素を作り出すのに膨大な電力が必要で、その上今後インフラにも莫大な投資をしなくてはならないなど問題が山積の状態だ。

自動車というものから根本的に脱却して全く新しい交通システムの構築を目指すと言ってもそれも簡単なことではないだろう。当面は環境に配慮した新しいタイプの車作りを進めるとともに企業存続・発展のために新たな分野への進出を検討していくことになるのだろう。

今後、どのような分野への進出が自動車産業にとって利益になるかを考えてみると、一つは制御工学、いわゆるロボットなどに象徴される機械制御分野、それからコンピューターなどに代表されるエレクトロニクス分野、あるいはこれも様々な制約があるものの旅客機などに代表される航空機工学、さらに宇宙・ロケット工学、ナノテク、環境技術などの高度な技術力を要する先端技術産業だろう。

トヨタは制御工学についてはロボット研究などで商品化一歩手前まで手をつけているようだ。また今の車は電子制御の塊のようなものなので機械制御技術ということではかなり先端にいるのだろう。電子産業はややお門違いで今後トヨタがLSIやコンピューター生産に手を染めることはないだろうが。制御と言う点を考えると当然関連してくる分野だろう。ナノテクなども製品の小型化という点で関連が出てくるのだろうが、応用技術ということになるので基礎工学については他企業が開発したものを使うのだろう。

そして航空機については以前から小型機の開発を行っていたようだから興味はあるのだろうが、どんな形でこの分野に参入していくかは今後の課題だろう。当面は小型のビジネス機、コミューター機などの開発販売から始まるのだろうか。それについては富士重工を系列化したことで十分な技術的裏付けが出来たことになる。ただそれ以上となるとまだ十分ではないかも知れない。

こうして見て行くと制御工学、航空工学、宇宙工学、環境工学の4分野あたりが輸送機器メーカーであるトヨタが目指す新たな分野のように思えるが、いっそのことMRJ開発参画をきっかけとして三菱重工との連携を深めて行ったらどうなのだろう。三菱重工と言えば航空宇宙工学、船舶工学、プラント設計、環境工学などでは先端の技術力を有しているのだろうし、悪い選択でもないように思うが。

ただ、この分野で先を行っているのは三菱重工で技術的にリードするのが三菱、金を出すのがトヨタという形になってしまうのはトヨタにとってはあまり喜ばしいことではないかも知れないが。ついでに三菱自動車も巻き込んで総合輸送機器、重機械グループでも作ってしまえば面白いのだろうが、経済界はいろいろと利益が入り組んでいてそんなに簡単にことが運びそうにないのでお互いに利益のある分野での提携が出来ればそれだけでも日本の産業界にとって大きな利益に結びつくのではないかと思うがどうなのだろう。

いずれにしてもどちらもその分野で日本を代表する大企業で相応の技術力を持ち合わせているのだから上手い具合に提携して今後の日本の産業界を主導して行けるような体制作りをしてくれると安定期に入って新興国の追撃を受ける立場になった日本の産業界に有益な力になることだろう。企業それ自体の発展と国の経済の繁栄は切っても切れない関係にあるのだから是非良い方向に向かって検討して行って欲しい。僕の持ち株評価も上がるだろうし。

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