トヨタは富士重工に対する持ち株比率を8.7%から倍増した。これで富士重工はトヨタグループに組み込まれることになったが、その目的はどの辺りにあるのだろう。系列化が進んだことで富士重工は軽自動車の自社生産を中止してダイハツの製品をOEM供給を受けて販売することになった。小型車もダイハツのブーンなどを販売するそうだ。

そうするとトヨタが富士重工を買収する目的は何なのだろう。富士重工はレガシーやインプレッサなど特徴ある車を世に出していてそれなりにこれらの車に対するファンがついてはいるようだが決して大きい市場を持っているとはいえない。一時期一世を風靡したワゴンもすでにミニバンに取って代わられており魅力のある商品ではなくなっている。トヨタが富士重工に車に関して何らかの期待を寄せているとは考え難い。

それでは富士重工を買収する目的は何なのかと言えば富士重工が有している航空機部門の取り込みではないだろうか。過去にトヨタは米国で小型機の生産を行おうとしたがどうも上手く行かなかったようだ。金があっても技術がないと航空機の開発は難しいのだろう。

富士重工はこれまで主に自衛隊の初等練習機やヘリコプターの生産を行って来た。しかし陸上自衛隊の中型輸送ヘリの生産が終了し、AH-64D戦闘ヘリも13機で調達中止となった。残るのは海上自衛隊向けの初等練習機と無人標的機くらいしかない。

今後自衛隊向けの航空機は三菱重工が戦闘機、川崎重工が大型機を担当する二極化が進行するものと思われる。しかし富士重工は戦前、戦中は主に陸軍の戦闘機、爆撃機を中心に開発を行い、一式戦闘機、二式単座戦闘機、四式戦闘機などの主力戦闘機を開発生産していた。戦後も国産初のジェット練習機を開発し、またエアロスバルと呼ばれる軽飛行機の自社開発なども行っており、またほとんどの国産航空機の開発に携わっている。

富士重工は会社の規模が小さいので自社で航空機の開発を行えるほどの資金力はないが航空機についてはそれなりの技術力は有している。トヨタの豊な資金力と世界的な販売力を背景にして航空機開発に乗り出せばそれなりのものは作れるだろう。

トヨタは三菱重工のMRJ開発に資金参加することを決定しているが、その理由は「国策に協力するため」としている。しかしこれは建前で将来何らかの形で航空機産業に参入することを可能性以上のレベルで検討しているのだろう。

日本の航空機産業が今後どの程度発展するか全く未知数で金食い虫に終わる可能性も大きいのだが、ホンダがビジネスジェットを自社開発して販売を始めるようだ。これもどの程度採算が取れるのか難しいところはあるのだろうが、この先車だけに会社の命運をかけてこれまでのように発展していけるのかと言う思いは少なからずあるのだろう。

航空機産業は裾野の広い大規模産業であるが、現在は欧米の独占状態が続いている。軍用機の開発は日本の政策規制があり、事業を国際的に展開することは望めないが、民間機であれば新規参入は極めて困難とは言えそれなりの可能性がないとは言えない。ここで技術陣を取り込んでMRJ開発で機体開発と販売、アフターケアのノウハウを学習すれば次は自社グループでこれを行い得る可能性は十分にある。

そうなれば莫大な資金力を擁するトヨタが本格的な旅客機開発を行うということも夢ではなくなるだろう。大型旅客機開発には数千億の金がかかると言うがトヨタなら自社でそれを賄うことも可能だろう。まあこれも素人の推論だがあの強かなトヨタがこのくらいのことを考えていてもおかしくはないだろう。またそれが実現すれば日本の産業界にとっても好ましいことになるだろう。

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