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今夜、車で郊外の道路を走っていたら道路の真ん中にうずくまっている猫が目に入った。動きもしないでこっちを見ている目だけが光っていた。

あっと思ったがブレーキを踏んでも間に合う距離でもないし、仕方がないのでステアリングを調整して猫を跨いで走り抜けた。

車に当たった感覚はなかったので何とかやり過ごすことが出来たと思ったが、通り過ぎる時に猫の鳴き声を聞いたような気がした。

そのまましばらく走ったが何だか何もしないで走り去るのが何とも後ろ髪を引かれる思いだったので車を回して猫がいた場所に戻ってみた。

猫は相変わらず道路の真ん中にうずくまっていた。わき道には車が停まっていたが動きそうもなかったので通り過ぎてからもう一度車を回して猫の近くに止めた。

猫はやはり車にはねられたようで顔と足から血を流していたが、車がかなり通るので危なくて見ていられなかった。どの車も猫を見つけると驚いたようにハンドルを切って猫を跨いで行く。この分では間違いなくひき殺されると思いながら対応を考えた。

車が切れるのを見計らって猫を道路からどけようと手を出すとどこにそんな力があるのかと思うほど歯をむき出して仰向けになって牙と4本の足の爪で抵抗する。

とても手で抱き上げられるような状況でもない。そんな力があるなら道路からどけばいいのにと思いながら猫から離れるとまた道路にうずくまってしまう。

わき道に止めてあった車から女性が降りて来て通過する車に手を振って徐行させようとするが夜間でかなりの速度を出しているので猫どころか人間も撥ねられそうになって危険なことこの上ない。

このままにしておけば間違いなくひき殺されると思ったが、素手ではどうにもならない。丁度道路わきに板が落ちていたのでその板に載せようとするのだがやはり暴れてなかなか板の上に載らない。そのまま道路脇まで押して行ってちょっと大人しくなったところを首をつかんで持ち上げた。

そして道路わきに積んであった枯れ草の陰に寝かせて頭を2,3回撫でてやったらそれまで敵意むき出しでらんらんと輝かせていた目を閉じてそのまま目を開かなくなった。

風が当たらないように板を風除け代わりに立ててやってその場を立ち去った。もうそれ以上はしてやれることもなかった。どのくらいの怪我なのかも分からなかったが生きられる命なら生きて欲しいと思う。

たかが野良猫一匹かも知れないが人間は自分たちの利便のためにずい分とこの地球の他の生き物を殺して来た。人間同士殺し合っても来たが。

あの猫もそんな身勝手な人間の犠牲者なのだろう。そんな身勝手な人間を自分の最悪の敵と認識して死力を振り絞って抵抗したのかも知れない。

猫は特に好きではないし野良猫自体も問題だが野良猫を作ったのは人間だろうし当然のこと今生きている野良猫にも生きる権利があるだろう。

人間は他の生き物の事などお構いなしに自分の利便を追及してとうとう地球そのものまで破壊しようとしている。自分自身もそういう人間の一人でえらそうなことなど言えた立場ではないかも知れない。

それに温暖化で絶滅するのは地球や自然ではなくて人間の方だとも言う。自然は人間が滅びた後もきっと静かにその命を保っているだろう。

最近、人間は命は地球よりも重いなどと言い始めた。鴻毛の軽きに等しい時代もあったのだからずい分な進歩かも知れない。

しかし地球よりも重いのは人の命だけではないだろう。この地球にある命は、生きられる命は皆地球よりも重いと人間は気がついてくれるのなら、もしかしたら自然は人間を許してくれるかも知れない。

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