それではYS-11を継ぐものはないのかと言うとそんなこともない。三菱重工業が「MRJ」なる小型の旅客機の開発を計画している。
これは地方のローカル線を繋ぐ70~90席の小型の旅客機でこの手の機体は最近事故続発で有名になったカナダのDHCやブラジルのエンブラエルという会社がほぼ市場を分け合っている。
三菱が開発している小型旅客機は低燃費、低騒音で運用コストが安いという願ったり適ったりの機体なのだが、世界の市場はDHCとエンブラエルが独占しているのでそんな市場に割って入るのだから並大抵のことでは販路は開けない。
日本人は淡白だから飛行機が作れれば良い、飛べば良い等と言って初飛行では涙に咽んで恍惚としてしまい、販路の開拓などということにはとんと無頓着でそれが原因でYS-11は大赤字になった。
今回は政府の補助はあるものの開発は三菱が担当して販売も同様に民間で行うことになるのでコスト管理や販路の開拓は重要な仕事になる。
また各エアラインのそれぞれの要求に答えなくてはならないし、販売した後のアフターケア(YS-11の時は売れば売りっぱなしで当初はそんな概念もなかったらしいが)などもまたノウハウを取得しなければいけない。
開発費は何だかんだで1千億円ほどにもなるらしい。三菱重工業というと日本を代表する会社のようだが実際は売り上げがホンダの四分の一ほどしかない会社だ。だからおよそ450億円程度を政府から援助してもらっても残りの開発費を負担するのはなかなか大変らしい。
500億といえばトヨタのF1年間予算と同程度なので考えようによっては勝てないF1などこの際きっぱりと切り捨てて三菱と組んで航空機の開発にでも精を出した方がいいかも知れない。
ホンダとトヨタのF1予算でこの旅客機が開発出来るならこの際そちらに方向転換していただこうか。ちなみにトヨタの売り上げは三菱の8倍ほどもあるのだから大変なものだと思う。トヨタが航空機業界に参入すれば航空自衛隊次期主力戦闘機の開発も予算だけなら楽勝だろう。
三菱と日本の技術者のことだから旅客機など開発すればきっとそれなりのものを作るんだろうが、やはり各航空会社の要求に合致させられるような冗長性のある使い易い機体の開発を心がけないといけない。
旅客機も胴体を伸ばして客席数を増やした長胴型や航続距離を伸ばした長距離路線用など様々なバリエーションを基本形から作り出せるよう開発には冗長性を持たせる必要があるのだが、この辺が日本人のもっとも不得意なところかも知れない。
その顕著な例がゼロ戦で出来上がった時は最高なのだが、あまりにも煮詰めすぎた窮屈な設計でその後の発展の余地がないのが多い。YS-11もやはりあまり発展性がなかったというか基本的にそういうことを考えていない設計だったようだ。この機体も最終的には120席程度まで発展する可能性が高いが、その辺がうまく処理出来るだろうか。
航空機産業などは極めて裾野の広い産業でうまく行けば経済の活性化にも繋がるんだろうが、大型機はアメリカのボーイングとヨーロッパのエアバス、小型はDHCとエンブラエルという図式が出来上がっていてなかなか市場参入は難しいらしい。
大型旅客機はボーイング、エアバスには到底敵いそうもないので当面作りやすくリスクも低い小型旅客機の開発で力をつけて将来に繋げるよう道を拓くのが無難で適当な方法なんかも知れない。
いずれにしても良いものを作れば当然のこと売れるのだから是非いいものを作って次に繋げて頂きたい。それにしてもトヨタF1、6年で3千億円というのは考えてみれば途方もない数字なのかも知れないなあ。1兆円あれば国産の戦闘機が国産のエンジン付きで出来るのだからこの際やってみたらいかがなものだろうか。その方がF1よりも生産的かも知れない。
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