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ものを書くということは最初はかなり大変な行為だった。何を書くか決まらない、ストーリーが展開しない、アイデアが出ない。これは職業作家も素人物書きも出来不出来の差こそあれ同じことだと思う。

そんなわけで最初の1、2編はなかなか物語が進まず苦労をしたがそれでも原稿用紙で200枚とか300枚のお話が出来上がるとそれが結構自信になった。そうは言ってもその程度の話が作れるというだけで他には何もないが。

誰がそう言っていたのか忘れたが、筆が乗って来ると登場人物が勝手に動き出して物語を展開してくれる、作者はそれを文字に映しているだけで自然に話が出来上がる、そんなことを聞いたことがあった。そういう気持ち出かければ良いとは思ったが、その時はそれがどんなことなのか分からなかった。

「翼の向こうに」を書いている時も結構スムーズに話が進んだが、それでも理屈をたくさん書いたのでかなり考える部分も多かった。それでもこの作品ではずっと以前から書いてみたいと思っていたことが、ずい分枚数はいってしまったが、大方書けたので満足しているしとても好きな作品になった。

何よりも登場人物が勝手に動き出してストーリーを展開して行くという感覚を思う存分に楽しんだのは「あり得ないことが、」だった。これは前回も書いたようにどうして話を終わらせるかそのアイデアが出なくて長いこと中断していたのだが、まあ書いてみようと思って再開すると最初はぎこちなかった話が何時の間にかするすると話が進み始めた。

思いついた終わらせ方というのは、

   ○ 入れ代わった同士を出会わせてそこで男に戻す
   ○ そのまま男に戻してしまう
   ○ 男に戻ったかどうかは読む側に推察させるようにして終わらせる

などいくつか考えたが、どうも面白くなかった。仕方がないのでとりあえず話を進めることにしたらそのうちにどうにかなるだろうと思い直して先に進めることにした。

そうしたら馬の骨氏が登場して女土方が登場して北の政所様が登場してクレヨンが登場してテキストエディターのお姉さんが登場して社長が登場して言葉屋が登場してマスターが登場して、そして世紀のパラノイア営業君が登場して金融翁が登場してこんな人物達が絡み合って何と何と超長編作品になってしまった。

僕はと言えば、本当にこうした登場人物の性格や行動を傍目で見て言葉に置き換えているだけという具合で話は勝手にどんどん進んでいってしまった。

そしてどこかの中年男に乗っ取られた佐山芳恵も元に戻しいてやることもどうなったのかを説明することもしないでそのままに終わらせてしまった。

でもまあ「あり得ないことが、」起こったのだからそれも仕方がないことなのかも知れない。この話はまた機会があったらぜひ続編でも書いてみたい、変身前の佐山芳恵とか。でもそれでは普通の女になってしまうからそれは僕の意図するところではなくなってしまう。

やはり前向きで強気で独立独歩で強かでしなやかな思考を持って、でもどこか優しさのあるそんな男の感性と思考を持った女が生きる様を映して見せたのが面白かったのかも知れない。

僕は是非近いうちにまた彼女達に登場して欲しいと思っている。実を言うと本当は終わらせたくなかったのだが、あまりにも長いものになってしまったので一旦切れ目を入れたんだ。だからまたきっと彼女達は元気な姿を見せてくれると思う。

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