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埼玉県知事が、「自衛隊は人殺しの訓練をしている」と言ったらしいが、これが問題になっている。どうもどこぞの大臣の「女性は産む機械」発言と同様で軽率の誹りを免れない。職務として人を殺傷する権限を有するということになると厳格な制限はあるものの警察、海上保安庁、入国管理局、税関など武器の携帯が認められている機関は多かれ少なかれすべて人殺しの訓練をしていることになってしまう。

実際に職務として人の命を奪った件数は戦闘経験のない自衛隊よりも警察の方がはるかに多いだろう。しかし何も好き好んでやっているわけではなく真に止むを得ない状況下でしたことで、それは自衛隊も同じだろう。

ところで最近は「自衛隊は軍隊か」という論争はほとんど行われなくなった。社会的に自衛隊は軍隊だと言う共通認識が出来たのか、それとも国連平和維持活動や災害救助活動などでイメージが変わったのかその辺は良くは分からない。あるいはそのような社会問題そのものに対して世の中が興味を失っているのかも知れない。

実際に自衛隊の戦力はどの程度だろう。自衛隊が発行した資料などを見てみると全般的に控え目な数字が並んでいるようだが、海軍のとしての海上自衛隊の戦力は世界でもベスト5に入ると思っている。空母と原子力潜水艦を持たないのは弱点だが、16DDH、18DDHと言われる全通甲板型護衛艦はその気になれば10~20機程度のAV-8Bなどの戦闘攻撃機を運用することは可能だろう。

自衛隊は耐熱塗装もしていないし、航空機を発艦させるスキージャンプ台と呼ばれる勾配もないと空母の用法は出来ないと強調するが、コンテナ船でも運用可能な航空機を軍艦で運用出来ないことはないだろうし、ジャンプ台などすぐに増設出来るだろう。公表はしないだろうが、当然そうした運用も計画はしていると思うし、そのくらいのことをしていないとまともに戦える軍隊とは言えないだろう。またイージス艦を含め比較的新しい戦闘艦50隻と高性能在来型潜水艦16隻、P-3C哨戒機100機近くを揃えた海上戦力は米国に次いで世界第2位とも言われるほどの実力だそうだ。

空軍としての航空自衛隊も最新鋭の戦闘機約300機、早期警戒管制機、早期警戒機、さらには空中給油機を導入し、最新の防空システムまで備えているそのバランスの取れた戦力はやはり世界でもトップ10に十分入る実力を持っているだろう。ただし航空自衛隊は現在、旧式戦闘機の更新と現用戦闘機の能力向上期にあるが、MDに予算を取られて計画が遅れがちである点はややマイナスだろう。対地攻撃力もF-2によって飛躍的に強化されている。F-2は使用出来る兵器の種類が少ないと言うが、これは仕様の問題で航空機の問題ではない。

最後は陸上自衛隊だが、これはどうだろう。兵員数ならかなり下位に位置するが、人件費に予算を食われて装備の更新近代化も遅々として進まない。戦車も数は揃っているが、能力向上を行わないので時間と共に旧式化して相対的戦闘力は低下する一方だ。歩兵の装甲化も遅々として進まない。しかし、種々の悪条件ながら以前の甲、乙2種類の小型師団しか持たず、日本の国土や実情にそぐわない野戦の訓練ばかりを続けていた時代から目的ごとに部隊の規模や装備、編成を変え、臨機応変な対応が出来るよう部隊の改編を始め、訓練も実情に即した市街戦や特殊戦の訓練を始めた陸上自衛隊は今後10年ほどの間に小粒でもぴりりと辛いスパイスの効いた戦闘集団に変身するかも知れない。

基本的に核戦力を除けば通常戦力で日本に攻撃を仕掛けられる国家は米国しか存在しない。ロシアも中国も当分の間は日本に大規模侵略を企てるほどの力は持てないだろう。日本は自国のみでは防衛は成り立たないと言うが、日本を侵略出来る国は世界で一つしかないと言う事実はそれだけ日本の軍事力が大きくなったことの証明だろう。

今後、世界の軍事力がどのような方向へと進んでいくのかその予測は難しいが、思想的な対立に加えて食料、エネルギーを巡る対立など、紛争の火種はさらに多様化していくだろうから世界各国の軍事力が低下していくことはないだろう。ただ兵器の高性能化、高価格化が進行するだろうから持てる国と持たざる国の格差は拡大していくだろう。

いずれにしても人間が存在する限り争いの種は尽きないだろうから兵器や軍事力の価値が低下することはあり得ないのだろうが、兵器などと言うものは無駄になっても良いので使うことなくその耐用年数を全うして消えて行って欲しいと思う。戦っても後に残るのは破壊と殺戮そして絶えることなく続く憎しみの連鎖だけなのだから。