脳

以前は脳は一度損傷すると回復不能というのが常識だった。脳細胞を繋いでいるノイロンという神経は一度切れてしまうと二度と再生しないと。ところがその後脳の研究が進んでいくと脳は一部が損傷しても他の部分でその機能を代替すると言い始め、さらに最近は脳は筋肉と同じような構造で使えば使うだけ鍛えることが出来るのだそうだ。

先日もＮＨＫのドキュメンタリーで放送していたが、アルツハイマー症候群や認知症の老人に簡単な計算や短い文章の音読等を毎日続けさせると脳の機能が回復して感情も安定してくるそうだ。また、脳を使い続けていた人間は脳の記憶野が拡大しているのでアルツハイマー症候群などに罹っても進行をかなり食い止めることが出来るらしい。そうすると年を取るとものごとを覚えられないとか新しいことを吸収できないなどと言うのは単に面倒でやりたくないと言う言い訳か年を取ったら脳が活動しなくなるという自己暗示にかかっているなどと言われかねない。

そう言えば年齢に関係なく思考に柔軟性を欠いている人間は真砂の数ほどいるうのだから若いから飲み込みが良いとか柔軟性があるというのは間違いかもしれない。要は物事に対してどれほど新鮮で旺盛な興味と好奇心を持ち続けられるかと言うことなのだろう。常に新しいものを取り入れながら自分の持っているスタンダードを更新していけば思考が硬直して新しいものに興味を示さなかったり思考に柔軟性を失って世の中の変化に対応出来なくなったりすることもないのかも知れない。

年を取ると過去に思いを馳せることが多くなるのかも知れないが、思い出に浸ることも悪くはないが、先を見て新しいものに触れて脳を刺激して活性化し、常に柔軟で健全な思考を持ち続けたいと思う。それが良かったか悪かったかは別の問題だが、人間がここまで科学文明を発達させたのも人間が他の動物よりも遥かに好奇心が旺盛だったからだと思う。食性にしても人間ほど多種多様なものを食べる動物はいない。最初にアンコウとかナマコを食った人間はきっと人一倍好奇心が旺盛だったのだろう。

身の周りのほんの数メートルの視界の中で生きていると興味の対象がなくなって好奇心が失われてしまうのかもしれないが、この世界はほとんど無限と言っても良いほど広いので興味の対象には事欠かない。面倒だとかもうどうでも良いなどと言わないで、常に旺盛な知的好奇心を持ち続けよう。そして脳を鍛えよう。その気持ちさえあれば出来ないことなんかなくなるかも知れない。そうすれば何か今までとは違ったものの姿が見えてくるかも知れない。最後にもう一度、脳は幾つになってもどんな状態でも回復させ鍛えることが出来るそうだ。