「どうかな、裸の付き合いで理解と親睦が深まったかな。」
部屋に戻った僕達に社長が声をかけた。
「ええお互いに青あざを見せ合ってね。気持ちは以前よりずっと通じ合ったわ。」
北の政所様はそう応じていたが、僕にしても女土方にしてもさほど変わったという気はしなかった。北の政所様にしても社長に単純に応じただけだったんだろう。一緒に風呂に入って気持ちが通じるのならこの世に誤解や人間関係の軋轢などなくなって誰も苦労はしないだろう。
「まあどの程度距離が近くなったかは別にしてお互いに理解し合おうと言う気持ちが出来ることはいいことだ。さてそれでどうする、そろそろお開きにするかな。それとも引き続いて二次会と行こうか。」
「私はかまわないけどお二人はどうするの。」
北の政所様が僕たちを見回した。
「かまわないわ、特に予定もないし、ねえ。」
女土方がすかさず応じた。僕も特に何も言わずに頷いて応じた。
「それじゃあ二次会決定だな。明日は帰るだけだし明後日は休みなのだから朝まで飲んでもいいな。」
社長は過激なことを言って冷蔵庫から新しいビールやワインを取り出した。どうもそのつもりで僕たちが風呂に入っている間に準備したようだった。
「僕と冴子はけっこう行き来があってねえ。それがいいのか悪いのかは意見が分かれるところだろうけど親父が分け隔てをしなかったので子供の頃は良く一緒に飯を食ったり風呂に入ったりしたし同じ布団で寝たことも何度もあった。けっこう大きくなってからも冴子は僕の前でも平気で着替えをしていたりしていたからなあ。だから僕には腹違いと言ってもほとんど普通の兄弟にしか思えないんだ。今回のことはそういう意味では私情と言えば確かにそうだが、会社の将来にも大きく影響してくるのでどうか二人にはその意を汲んでもらってよろしくお願いしたい。」
僕と女土方は黙って頷いた。何となく社長のペースに乗せられていいようにされているような感じがした。それからは社長の昔話はしばらく続いた。話題はほとんど北の政所様のことだった。それを聞いていてもしかしたらこの二人は過去にお互いに惹かれ合っていたのかもしれないと思うようになった。いやもしかしたら過去にではなく今もかも知れない。
酔いが回るにつれて二人はじゃれ合い始めた。もう円熟期に入っている二人だったが、心の中は未だに青年なのかも知れない。それはこの二人だけではなくて僕たちも同じことだった。人間なんて年を取ると何でも分かったようなばかに落ち着いた振りをしているが、一皮剥けば二十歳の頃と何も変わらない。ただ周りや自分をごまかすのがうまくなっているだけなのかも知れない。
「ねえ、今日はみんな一緒にここで寝ない。雑魚寝っていいんじゃない。」
北の政所様がおかしなことを言い出した。
「でも私達はお邪魔じゃないかしら、一緒では。」
女土方がこれまた過激なことを言い放った。
「そんなこと言わないでみんなで雑魚寝とかそういうのもたまにはいいんじゃない。ねえ酔っ払ったついでに一つ聞いてもいい。悪く取らないでね、女同士ってどんな感じなの。」
女土方はにやりと笑った。その笑った顔が今まで見たこともないほど怖かった。
「口で言っても実際にやってみないと分からないでしょう。こっちにいらっしゃい、あなたにも分からせてあげるから。」
どうも酔っ払いは始末が悪い。本当に始めてしまったらどうしようと思いながらもけっこう興味津々で二人を見ていた。
「お、おい、ここには一人だけだけど男がいるんだから。」
社長は困った様子で僕を振り返った。でも僕の方に振られても僕にもどうしようもなかった。北の政所様はふらりと立ち上がって女土方の方に歩き出した。それを受け止めるように女土方が立ち上がった。ああついに宿敵同士が肌を交えるのかと一瞬息を呑んだが、北の政所様は女土方の脇を通り過ぎた。そしてそのまま社長のところに行くとその脇に座り込んで社長にもたれかかった。女土方はこれもまたすれ違うように北の政所様をやり過ごすと僕の脇に座った。
「困ったな。」
社長は口ではそう言いながら表情はそんなに困っている様子でもなかった。
「俊彦、私、今日は飲み過ぎたのかな。何だか疲れちゃった。」
北の政所様は呂律の回らなくなった口調で甘えた声を出した。
「分かった。ちょっと我慢しろよ。」
社長はもたれかかっている北の政所様の背中に手を回すと大柄な体を軽々と簡単に抱き上げた。そしてそのままベッドルームの奥に運んで行くとしばらくそこから出て来なかった。僕と女土方は居間に取り残された形になってしまったが、女土方も軽い寝息を立てて僕に寄りかかったまま寝入ってしまったので起きているのは僕一人だった。社長と北の政所様が消えた寝室で何が起こっているのか少なからず興味があったが、中に踏み込むわけにも行かず、外には何の音も漏れ聞こえず結局部屋の中で何が起こっているのか皆目分からなかった。小一時間も過ぎた頃社長はやっと部屋から出て来て僕の前に座った。
「いや、困ったものだ、彼女の甘えん坊にも。普段は強がっていても内面は脆いんだからな。」
僕は社長に何かしらの変化がないかと見ない振りをしてあからさまに服装などを凝視してしまったのだが、特に変わったところはなかった。幾ら何でも僕達がいるところで血を分けた兄弟が壁一枚隔てて愛を確認しあうなんて大胆不敵なことはしないだろう。そのうちに社長はベッドルームから出て来ると「よいしょ」と言いながら椅子に腰を下ろした。
「今見たとおり僕と冴子は極めて近い関係にあるんだ。勿論近親相姦ではないが、お互いに一人っ子で育った僕たちは精神的にはほとんどそれに近いと言ってもいいかもしれない。でも今回のことは私情で彼女を取締役にして佐山さん達に押し付けようとしているわけではないからそれだけは信じて欲しい。」
僕は黙って社長に頷いた。
「ありがとう。あなたの恋人にもずい分負担を掛けてしまったね。もうすっかり夢の中のようだけどここにはもう一つベッドルームがあるからそれを使って休ませて上げたらどうかな。」
僕はもう一度黙って頷くと社長がしたように女土方の背中に手を回して抱き上げた。男の頃の様に簡単にというわけには行かなかったが、それでも大した苦労もなく女土方をベッドに運んでそっと寝かしつけた。
居間に戻ると社長は一人でビールを飲んでいた。そう言えば社長はこれまで僕たちの接待に努めてあまり飲んでいなかったようだった。
「佐山さんも休むか。それとももう少し付き合ってもらえるかな。」
社長は戻った僕を見て微笑んだ。
「私でよろしいのならかまいません。でも飲めと言われても私はあまり飲めないかもしれませんけど。」
「そうか、無理を言って悪いね。ありがとう。」
社長は新しいグラスと缶ビールを差し出した。僕はそれを受け取ると缶のまま一口ビールを飲み込んだ。
「社長は森田さんのこと好きなんですね。今日社長が森田さんを抱き上げるのを見ていてその気持ちが痛いほど良く分かりました。」
僕は真っ直ぐに社長を見て言った。
「ああさすがに女性は鋭いな。僕は早くに母を亡くした。彼女は生活に父親がいなかった。お互いに満たされない感情を求め合ったのかも知れない。僕にしても彼女にしてもそんなに大それた人格は持ち合わせていなかったけれどそれでもお互いに支えあうには十分だった。
お互いに恋人が出来ても僕が結婚しても相手に嫉妬することもなく僕も冴子もお互いの感情は変わらなかった。勿論僕たちが世間で認められるような関係になれないことは百も承知だったしそういう関係を望んだこともなかった。お互いにたった一人の肉親として相手を身近に感じていれば肉の交わりがなくてもそれでよかったのかも知れない。
この部屋も本当のことを言うと冴子とつかの間の時間を過ごそうと思って取ったんだ。たった一人の肉親とわずかでも落ち着いた時間を過ごすために。世間はこういうことには敏感な割に実態は興味本位にしか見てはくれないが、僕と冴子は決して世間の興味を煽り立てるような関係ではない。冴子はさっき話していたクライアントの紳士と恋をしていたしその前にも彼女には何人も恋人と言う男性がいた。それは僕も同じだ。幸せになろうとするんだが、気がつくと夢破れてお互いのそばに戻ってしまう。
だからもうそういうことはやめることにした。僕は株主や会社、それに社員の皆さんに責任がある。あと何年かの間、僕は精一杯その責任を果たすつもりだ。だからあなた達や冴子に協力して欲しい。力を貸して欲しいんだ。そうして会社に新しい方向を与えて基盤を作れたら次に委ねようと思っているんだ。
人間五十年下天のうちに比ぶれば夢幻のごとくなり。一度この世に生を受け滅せぬもののあるべきか。
敦盛、僕はこれが好きでね、特に公人としての自分の先行きを考えると何だかこれは自分のためにある言葉のような気がしてね。
なあ佐山さん、あなたはとても客観的な冷静なものの見方をする人だね。あなたを見ているととても女性には思えない。自分と同性の者と向き合っているようだ。あなたがもしも男だったらきっととても良い話し相手になれただろうに。そんな気がするんだ。僕にはあなたが男に思えて仕方がないしそうでないことが残念だ。」
何だか小樽で会ったすらり氏と同じことをまた聞かされた。でもそういう言葉を聴くと何だか納得してしまっている自分がそこにいた。元々姿形は女でも基本的な性別は男なのだし、男だった時の年齢自体もそういう年に近かったのだから無理もないのかもしれない。それにしても同性愛だの近親相姦まがいだの異常な関係ばかりが目の前で展開されるようだが、そういう人たちも単に興味本位でなく本当に当事者達の思うところを聞いてみるとしっかりと自分の責任を考えながら生きているのだなと感じ入ってしまった。却って僕の方が変な興味本位で他人を無責任に覗き見するような生き方をしているのかもしれないと思うと何だか自分が恥ずかしくなった。
部屋に戻った僕達に社長が声をかけた。
「ええお互いに青あざを見せ合ってね。気持ちは以前よりずっと通じ合ったわ。」
北の政所様はそう応じていたが、僕にしても女土方にしてもさほど変わったという気はしなかった。北の政所様にしても社長に単純に応じただけだったんだろう。一緒に風呂に入って気持ちが通じるのならこの世に誤解や人間関係の軋轢などなくなって誰も苦労はしないだろう。
「まあどの程度距離が近くなったかは別にしてお互いに理解し合おうと言う気持ちが出来ることはいいことだ。さてそれでどうする、そろそろお開きにするかな。それとも引き続いて二次会と行こうか。」
「私はかまわないけどお二人はどうするの。」
北の政所様が僕たちを見回した。
「かまわないわ、特に予定もないし、ねえ。」
女土方がすかさず応じた。僕も特に何も言わずに頷いて応じた。
「それじゃあ二次会決定だな。明日は帰るだけだし明後日は休みなのだから朝まで飲んでもいいな。」
社長は過激なことを言って冷蔵庫から新しいビールやワインを取り出した。どうもそのつもりで僕たちが風呂に入っている間に準備したようだった。
「僕と冴子はけっこう行き来があってねえ。それがいいのか悪いのかは意見が分かれるところだろうけど親父が分け隔てをしなかったので子供の頃は良く一緒に飯を食ったり風呂に入ったりしたし同じ布団で寝たことも何度もあった。けっこう大きくなってからも冴子は僕の前でも平気で着替えをしていたりしていたからなあ。だから僕には腹違いと言ってもほとんど普通の兄弟にしか思えないんだ。今回のことはそういう意味では私情と言えば確かにそうだが、会社の将来にも大きく影響してくるのでどうか二人にはその意を汲んでもらってよろしくお願いしたい。」
僕と女土方は黙って頷いた。何となく社長のペースに乗せられていいようにされているような感じがした。それからは社長の昔話はしばらく続いた。話題はほとんど北の政所様のことだった。それを聞いていてもしかしたらこの二人は過去にお互いに惹かれ合っていたのかもしれないと思うようになった。いやもしかしたら過去にではなく今もかも知れない。
酔いが回るにつれて二人はじゃれ合い始めた。もう円熟期に入っている二人だったが、心の中は未だに青年なのかも知れない。それはこの二人だけではなくて僕たちも同じことだった。人間なんて年を取ると何でも分かったようなばかに落ち着いた振りをしているが、一皮剥けば二十歳の頃と何も変わらない。ただ周りや自分をごまかすのがうまくなっているだけなのかも知れない。
「ねえ、今日はみんな一緒にここで寝ない。雑魚寝っていいんじゃない。」
北の政所様がおかしなことを言い出した。
「でも私達はお邪魔じゃないかしら、一緒では。」
女土方がこれまた過激なことを言い放った。
「そんなこと言わないでみんなで雑魚寝とかそういうのもたまにはいいんじゃない。ねえ酔っ払ったついでに一つ聞いてもいい。悪く取らないでね、女同士ってどんな感じなの。」
女土方はにやりと笑った。その笑った顔が今まで見たこともないほど怖かった。
「口で言っても実際にやってみないと分からないでしょう。こっちにいらっしゃい、あなたにも分からせてあげるから。」
どうも酔っ払いは始末が悪い。本当に始めてしまったらどうしようと思いながらもけっこう興味津々で二人を見ていた。
「お、おい、ここには一人だけだけど男がいるんだから。」
社長は困った様子で僕を振り返った。でも僕の方に振られても僕にもどうしようもなかった。北の政所様はふらりと立ち上がって女土方の方に歩き出した。それを受け止めるように女土方が立ち上がった。ああついに宿敵同士が肌を交えるのかと一瞬息を呑んだが、北の政所様は女土方の脇を通り過ぎた。そしてそのまま社長のところに行くとその脇に座り込んで社長にもたれかかった。女土方はこれもまたすれ違うように北の政所様をやり過ごすと僕の脇に座った。
「困ったな。」
社長は口ではそう言いながら表情はそんなに困っている様子でもなかった。
「俊彦、私、今日は飲み過ぎたのかな。何だか疲れちゃった。」
北の政所様は呂律の回らなくなった口調で甘えた声を出した。
「分かった。ちょっと我慢しろよ。」
社長はもたれかかっている北の政所様の背中に手を回すと大柄な体を軽々と簡単に抱き上げた。そしてそのままベッドルームの奥に運んで行くとしばらくそこから出て来なかった。僕と女土方は居間に取り残された形になってしまったが、女土方も軽い寝息を立てて僕に寄りかかったまま寝入ってしまったので起きているのは僕一人だった。社長と北の政所様が消えた寝室で何が起こっているのか少なからず興味があったが、中に踏み込むわけにも行かず、外には何の音も漏れ聞こえず結局部屋の中で何が起こっているのか皆目分からなかった。小一時間も過ぎた頃社長はやっと部屋から出て来て僕の前に座った。
「いや、困ったものだ、彼女の甘えん坊にも。普段は強がっていても内面は脆いんだからな。」
僕は社長に何かしらの変化がないかと見ない振りをしてあからさまに服装などを凝視してしまったのだが、特に変わったところはなかった。幾ら何でも僕達がいるところで血を分けた兄弟が壁一枚隔てて愛を確認しあうなんて大胆不敵なことはしないだろう。そのうちに社長はベッドルームから出て来ると「よいしょ」と言いながら椅子に腰を下ろした。
「今見たとおり僕と冴子は極めて近い関係にあるんだ。勿論近親相姦ではないが、お互いに一人っ子で育った僕たちは精神的にはほとんどそれに近いと言ってもいいかもしれない。でも今回のことは私情で彼女を取締役にして佐山さん達に押し付けようとしているわけではないからそれだけは信じて欲しい。」
僕は黙って社長に頷いた。
「ありがとう。あなたの恋人にもずい分負担を掛けてしまったね。もうすっかり夢の中のようだけどここにはもう一つベッドルームがあるからそれを使って休ませて上げたらどうかな。」
僕はもう一度黙って頷くと社長がしたように女土方の背中に手を回して抱き上げた。男の頃の様に簡単にというわけには行かなかったが、それでも大した苦労もなく女土方をベッドに運んでそっと寝かしつけた。
居間に戻ると社長は一人でビールを飲んでいた。そう言えば社長はこれまで僕たちの接待に努めてあまり飲んでいなかったようだった。
「佐山さんも休むか。それとももう少し付き合ってもらえるかな。」
社長は戻った僕を見て微笑んだ。
「私でよろしいのならかまいません。でも飲めと言われても私はあまり飲めないかもしれませんけど。」
「そうか、無理を言って悪いね。ありがとう。」
社長は新しいグラスと缶ビールを差し出した。僕はそれを受け取ると缶のまま一口ビールを飲み込んだ。
「社長は森田さんのこと好きなんですね。今日社長が森田さんを抱き上げるのを見ていてその気持ちが痛いほど良く分かりました。」
僕は真っ直ぐに社長を見て言った。
「ああさすがに女性は鋭いな。僕は早くに母を亡くした。彼女は生活に父親がいなかった。お互いに満たされない感情を求め合ったのかも知れない。僕にしても彼女にしてもそんなに大それた人格は持ち合わせていなかったけれどそれでもお互いに支えあうには十分だった。
お互いに恋人が出来ても僕が結婚しても相手に嫉妬することもなく僕も冴子もお互いの感情は変わらなかった。勿論僕たちが世間で認められるような関係になれないことは百も承知だったしそういう関係を望んだこともなかった。お互いにたった一人の肉親として相手を身近に感じていれば肉の交わりがなくてもそれでよかったのかも知れない。
この部屋も本当のことを言うと冴子とつかの間の時間を過ごそうと思って取ったんだ。たった一人の肉親とわずかでも落ち着いた時間を過ごすために。世間はこういうことには敏感な割に実態は興味本位にしか見てはくれないが、僕と冴子は決して世間の興味を煽り立てるような関係ではない。冴子はさっき話していたクライアントの紳士と恋をしていたしその前にも彼女には何人も恋人と言う男性がいた。それは僕も同じだ。幸せになろうとするんだが、気がつくと夢破れてお互いのそばに戻ってしまう。
だからもうそういうことはやめることにした。僕は株主や会社、それに社員の皆さんに責任がある。あと何年かの間、僕は精一杯その責任を果たすつもりだ。だからあなた達や冴子に協力して欲しい。力を貸して欲しいんだ。そうして会社に新しい方向を与えて基盤を作れたら次に委ねようと思っているんだ。
人間五十年下天のうちに比ぶれば夢幻のごとくなり。一度この世に生を受け滅せぬもののあるべきか。
敦盛、僕はこれが好きでね、特に公人としての自分の先行きを考えると何だかこれは自分のためにある言葉のような気がしてね。
なあ佐山さん、あなたはとても客観的な冷静なものの見方をする人だね。あなたを見ているととても女性には思えない。自分と同性の者と向き合っているようだ。あなたがもしも男だったらきっととても良い話し相手になれただろうに。そんな気がするんだ。僕にはあなたが男に思えて仕方がないしそうでないことが残念だ。」
何だか小樽で会ったすらり氏と同じことをまた聞かされた。でもそういう言葉を聴くと何だか納得してしまっている自分がそこにいた。元々姿形は女でも基本的な性別は男なのだし、男だった時の年齢自体もそういう年に近かったのだから無理もないのかもしれない。それにしても同性愛だの近親相姦まがいだの異常な関係ばかりが目の前で展開されるようだが、そういう人たちも単に興味本位でなく本当に当事者達の思うところを聞いてみるとしっかりと自分の責任を考えながら生きているのだなと感じ入ってしまった。却って僕の方が変な興味本位で他人を無責任に覗き見するような生き方をしているのかもしれないと思うと何だか自分が恥ずかしくなった。