1つ1つのエピソードが非常に濃厚で、つい何回も読み直している。
そんな中の一説。
安岡先生は勉強会でよく
「有名無力、無名有力」
と言われた。
有名無力、無名有力とはこういう意味だ。
「若いときには誰もがひとかどの人物になりたい、立派な会社を作り上げたいと一生懸命努力をします。
だんだん頭角を現し、人々の評価もいただけるようになって、名が上がって有名になってきます。会社の規模も大きくなってきます。
そうなるとちょっとした名士になり、講演を頼まれたり、新聞に原稿を書いたり、テレビに出演したりして、だんだん忙しくなってきます。そしていつのまにか自分を掘り下げる時間すらなくなって、有名ではあるけれども無力な人間になり下がることが多いものです。
しかし、世の中には、新聞、雑誌に名前が載るわけでもない、テレビのスポットライトがあたるわけでもないけれども、頭が下がる生き方をしている方がいらっしゃる。無名だけれども有力な生き方をしている方がいらっしゃる。私は時間がなくなって自分を失ってしまうよりも、無名のままでいい、自分を高め、磨く時間を持てる者でありたいのです。」
僕は、学生時代,非常に成績が悪い生徒でした。
そんな僕が歯科医師免許を持った時から、患者さんからすると『先生』に。
昔から『先生』という言葉が好きじゃないけれど、そういう資格を取ったのだから、本当の意味でそうなれるようにやるしかない。
学生時代いかに勉強していなかったかを反省し、ただ患者さんのために、もっと良い医療の提供をとの思いだけで、突き進んできた。
群れるのが好きではないので、特定のスタディーグループなどには所属せず、自分が足りないと思う分野に関して先駆者と思う先生の門を叩き、講習会に参加したり、時に実際の診療を見学させて頂いた。
そうしていると、株式会社「松風」の方達からご縁を頂き、講演会や雑誌への執筆、コラムなどの仕事をさせて頂けるようになった。
西の端の小さな島の一般歯科医なのに、本当に有り難い。
そのおかげで、この1年あまりに、全国の素晴らしい先生達と知り合いになれた。
僕は、ただ当たり前に「自分が受けたい医療をそのまま患者さんに提案する」この一心だけなので、飛び道具のような治療技術は持っていない。
そんな僕でも、世間にお役に立てる事があるならばとお話させて頂いたり、文章を書いている。
昨年、Facebookで昔から知っている後輩の先生に、
「先生、全国区ですね!」
と書かれて、違和感を感じた。
九州を離れて、ちょっとお話をさせて頂いただけで、全く意識していないからだ。
ただ、それだけの事なのに、そう思う先生もおられるんだと勉強になった。
昨日、治療後、自費のメインテナンス会員に入って下さっている患者さんに言われた、
「治療に1年以上かかったけど、やって良かったと思っとる。周りにも、そんなに歯で苦労しているなら行ってみなさいと勧めるんやけど、治療に時間がかかる、お金が高いと言って足が向かんみたい。」
と。
僕「いいんですよ。急に忙しくなっても困ります。ただ、一度時間をかけて、基礎からなおし、噛み合わせをしっかりつくれば、そう壊れません。そして、それをキープするために、このように定期的に診せてもらっていれば、壊れても部分修正ですむので、大きな治療は必要ありません。元気なうちに噛み合わせをつくるのは、とても大切です。」
と答えました。
痛みがある時にだけ来院される方は、どんどん咬合が崩れ、歳をとればとるほど、間違いなく苦労される。
現在、介護の現場で、年配の方の口腔内が酷い状況にあるのは、その悪しき習慣があるためだ。
その悪循環をどこかで断たなくてはいけない。
しかし、そこで、安く早くと言われても、ウチは牛丼屋じゃないので、お断りしている。
全て保険診療でさせてもらったとしても、全顎治療には、どうしても時間がかかる。
もちろん、同じ治療は、1分1秒でも早く奇麗に出来るようにと常に意識している。
長年一緒に働いているスタッフ達は解るが、昔からすると、明らかにゴールが早くなった。
昨年、下川公一先生の臨床を間近で学ばせて頂いたのが非常に大きい。
家族との時間を大切にしたいので、月の半分しか週末に歯科関係の予定を組まないようにしている。
家族あっての仕事である。
最後に、もう一度、安岡先生の言葉を借りて、
「時間がなくなって自分を失ってしまうよりも、無名のままでいい、自分を高め、磨く時間を持てる者でありたいのです。」
素敵なエピソード満載の本は、コチラです。
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連続で2回も紹介するので、間違いなく良い本です。
本日も皆様と共に、良い一日でありますように!
真面目な長文にお付き合い頂き、本当にありがとうございました!
感謝!