勁 jin4 (ジン)1 | 萩天の空

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 気については一応終わり、今回からは勁について文献からの抜粋をしてみます。

 

 各著者の敬称は省略させていただきます。

 

 

 

 「合気道の科学」  吉丸慶雪

 

 ○ 相撲の寄りは、丸めた背中を急に伸ばすことによって力を出している。つまり踏ん張った脚を起点にして、背筋の伸張力を差し手を通して相手の体に加えていることがわかる。差し手は相手の体を抱かえているだけであって、手の力で押そうとはしていない。手は単に背筋の伸張力の伝達路になっている。中国拳法では、このように伝達される力を勁力と命名し、腕の直接力とは違う別の力の出し方として認識しているのである。

 

 ○ ベテランの左官の話では、初心者は腕を使って壁を塗るので直ぐに疲れるし、大型のコテなどとても使えないのであるが、ベテランになると大型のコテで楽々と塗りしかもまったく疲れないのだという。コツは、腕を使わずに腰を使うことだという。この腰を使うという動作(技)では、腕は力を入れずに伸ばすようにして使われている。腕または体の前面を堅く(屈筋を収縮)してみればこうした作業は出来なくなるので、腰のひねりが背中と腕の伸筋を通って伝達されていることがわかる。実はこの動作は腰のひねりだけが原動力ではなく、背筋の伸張力が主な原動力なのであって、それが腕の伸筋を伝達路として手先に集中されているのである。そのため腕は比較的疲れることがないのである。このように伝達される力が勁力なのである。

 

 ○ ウェイト・リフティングのスナッチの動作も、バーベルを頭の上に引き上げるのに、まず腕の力を使っていない、強い引きでも最良のフォームでは腕に力感覚が無いことが分かる。つまりバーベルを頭上まで引き上げたのは、背筋、腹筋、脚筋肉のパワーであって、腕はそのパワーの伝達経路としてのみ使われる時には、その通路は伸筋であるから引く感覚はあまりないのである。

 

 ○ 上海雑技団の絶技「頭頂跳梯」ーーー手も足も使わずに頭で階段を登る技ーーーでは、術者は頭で倒立した状態から、まず脚を縮めて、つづいて脚を蹴り伸ばし、体全体の伸張力を利用して階段を登る。脚を蹴り伸ばした力が背筋を通じて頭に伝達され、頭から階段に対して集中力として働くのである。この伝達される力を勁力という。つまり勁力が集注力になるのである。

 

 ○ 重い荷物を高い場所に上げたいことがある。そういう時に荷物をぶら下げて前後に振り、前に来た時に勢いをつけて上に振り上げる、というようなことは普通に行われている。これも振り上げる時に背中を伸ばして、腕は楽に伸ばしたまま荷物を引き上げている。このように背筋がパワー源になるのが勁力である。

 

 ○ 勁力は、手先に伝達されるだけではない。例えば頭頂跳梯では頭の先端に力を伝達している。

 

 

 

 続きは次回