バスティーユに着いて、下船した母は「200年も前にナポレオンが命じて作った
んだってねぇ。すごいね。」と何度も口にして感激している。そして「一生懸命見た
けど、カラクリが分からなかった。」とさほど残念そうでもなく言う。そうか、水門に
水を溜めて船を浮かせて進み、また水門を閉じて水を排水する。そのシステムを
母はちゃんと知りたかったんだ。娘はバシャバシャ写真を撮っていた。今回の旅
の役目を、彼女なりに頑張って果たしている。私だけが小難しいことはどうでも良
くて、ただただのんびりとしていた。
これから、私達は「Montparnasse」(モンパルナス)へ向かう。折しも
91番のバスが来て、車体にモンパルナスと書いてあった。飛び乗るように
乗ってから、メモを取ろうとして番号が思い出せない。そこへ「91番って、
あそこに書いてあるよ。」と母が言う。これはやられた。おうた‟親”に教
えられてしまった。
今夜のレストランは、パリ市内を一望出来るモンパルナスタワーの56階
にある、「Le Ciel de Paris」(ル・シエル・ド・パリ)の予定。パリの
夜景を見ながらの夕食は最後の夜に相応しいだろうと、スケジュールに組
込んだ。ネットで調べた段階では、予約しないと絶対に無理という感じが
しなかった。料理も良いとか、いや普通などと様々。こちらの人達の夕食
は遅いので、少し早く行けばなんとかなるだろう。そう思って、予約はし
なかった。
バスを降りて見上げたモンパルナスタワー
タワーの前で18:00。時間的に少し早過ぎるので、展望台へ向かうこと
にする。チケット売り場は特別混んではいなかったが、途切れなくお客が
やって来る。日本で言えば、最近出来たスカイツリーみたいなものだろう
か。
エレベーターはものすごい高速で、あっと言う間に56階に着いた。そこ
からは確かにパリ市内が良く見渡せた。エッフェル塔も直近だ。360度の
展望がウリだが、実は180度を展望台として使っていて、残りの180度はレ
ストランになっている。展望台の方にも軽く食べられるカフェがあるが、
特別なものは無さそうだった。
エレベーターに乗る
パリで一番の高さから見る、
夕暮れ前のエッフェル塔
エッフェル塔を摘まんでみる。
(何かでみたことがあると、真似した娘の画像)
最上の56階は丁度真ん中でスッパリと仕切られていて、展望台から直に
レストランへは行けないようになっていた。仕方ないので一度1階に戻り、
専用のエレベーターに乗る。再び56階で降りて見た光景は、既に順番待ち
の人々がびっしりと椅子に座って待っている姿だった。ル・シエルド・パ
リは一晩に2回転だそうだが、早い方には到底入れそうにもない。これは
無理だなと判断して早々に立ち去ることにした。
この専用エレベーターに乗って再び56階へ
既に待っている人達。
この後ろ側にもずらりと椅子が置いてある
モンパルナスタワーの外に出て、「さて、どうしようか・・・。」と迷
ってしまう。すぐ近くに、簡単に済ませられるカフェがあった。だが、最
後の夜にここ?と3人で一度中に入ったが、やめてしまった。考えに考え
て、本来ならば(つまり体調を崩さなければ)今日の午前中に予定してい
た「Carette」(カレット)を目指す事にする。ここからタクシーで行く
のに丁度良い距離。遠すぎず、近過ぎず。私のメモには、朝7:00~24:
00まで無休で営業と書いてある。
早速タクシーを捕まえて乗り込んだ。最寄りのトロカデロ広場まで走っ
て、15.80€。お金を払い終わると突然、娘に「後ろを振り返って!」と言
われた。そこには夜空にすっくと立つエッフェル塔。まさに目の前!タワ
ーから見たエッフェル塔とは比べようもない。遥か昔に、夜のセーヌ河の
遊覧船から見上げた冬のエッフェル塔に勝るとも劣らないだろう。確か、
あの時も私と母と娘と3人だった。母もこのサプライズに大喜び。良かっ
たと、心から思った。
今までチャンスが無かったが、ここはエッフェル塔を見る
絶景の場所として有名らしい。大勢の人が集まっていた