中島みゆきのことをあんまり知る者ではないのだが、

しょっちゅうカラオケに誘われていた一時期、

何曲か覚えて唄わせてもらっていた過去がある。

声域が狭くキーがGのワシはカラオケで歌いたくても唄えない曲ばかりなのだが、

女性ボーカルのキーの方が唄いやすいことにある時気付き、そうして

中島みゆきの詩の世界をそれなりにドラマチックに唱っていたつもりだった。が、

とあるカラオケボックスで「本人歌唱」バージョンを聴いてみて、

その衝撃に魂を抜かれ悄然とする。

「ファイト!」だったかな?

力強く野太い低音の迫力、語り掛けるような変拍子、美しいファルセット、

変幻自在多彩に声を操り世界を支配する歌姫の魔力をライブバージョンで初めて体感し、

それ以来、畏れ多すぎて中島みゆき様の曲を唄うことはできなくなった。

 

ああ、生きてるうちに中島みゆき様を生で聴きたいものだねえ~。。。

 

なーんてことを、いつもの呑み友Nとの相変わらずの赤提灯で、話のネタも尽きて

独り言ちるように語った。

 

と、翌日、NからLINEが。

中島みゆき様のライブのチケット情報だった。

えー、こんなタイミングでちょうど公演予定があったのか~!

場所も国際フォーラム。そこなら平日の仕事あとでも行けるじゃん。

とか言いながら、仕事にかまけて油断していると、

5月公演もあっという間にソールドアウト、

え、じゃあ、当日券に賭けるか!と、10時過ぎにアクセスするも既に終了!

 

・・・すみません、みゆき様、いささかなめておりました。

同じく当日トライしたNも同様に撃沈だったと言う。

あ、何? お前も行く気満々だったの? 

Nが音楽好きなのは知ってたけど、中島みゆきの話をした事はついぞなかったのだ。

すると、中学生時代はよく聴いていたのだ、と言う。

オールナイトニッポンもよく聴いてたし…。

互いに当日券トライにあっさりノックアウトされた金曜、

仕方ないので、二人してまたいつもの赤提灯に集合。

国際フォーラムに行くつもりだったのが変わり映えの無い週末の夜だ。

 

Nはジョッキにホッピーの中身をガバガバ注ぎながら、

「実はオレ誕生日が同じなのよ~中島みゆきとぉ」

と鼻ふくらませマウント取って来る。

「おおっ、それすげーじゃん」

Nのジョッキのほぼ焼酎の上にホッピー外黒をちょびっと被せるように注いでやる。

「ちょうど一回り違いで、干支も同じなんだよね~」

ゴクゴクッ! ぷは――っ!

♪けしょうなんてどぉでもいいとっ思ってぇいたぁ~

調子っぱずれにNが唐突に唄い始める。

下手だ。下手過ぎる。地獄だ。

思わず顔をしかめるワシ。

「いーじゃん、みんなうるさくて誰も聴いてないよお~」

確かに立錐の余地も無い赤提灯居酒屋は、ざわめきと言う以上の喧騒で、

Nの馬鹿歌もワシ以外の席には届かないようだった。

♪まーわるぅまーわるぅ~よじだい~はまわるぅ~

まわるのはワシの悪酔いじゃー!

カラオケ行こうカラオケ行こう!とわめき始めたNをなだめながら

何とか話題を大谷の嫁さんとかに逸らしながら歌を止めさせる。

 

Nの話によると、今回のライブは2020年の「ラストツアー」が

コロナで中止になったため、その代替として東京・大阪のみで開催される、

正真正銘の「ラスト」と目されているライブなのだ、と言う。

それじゃファンクラブにも入ってない情弱オヤジが簡単にチケット取れようもないじゃんね。

 

高橋幸宏、坂本龍一、KAN、もんたよしのり、大橋純子、谷村新司・・・

みゆき様が…と不吉なことを言うつもりは毛頭ないのだが、

生ライブを聴けるチャンスがあるのなら、

全力で聴きに行く努力を払わねばならんのだな、今!

こっちだっていつ何時「ダメ」になるのかわかったもんじゃないんだし。

 

5月公演の「当日券」を全身全霊で獲りに行く覚悟を誓い合ったのだが、

果たしてこのボンクラコンビ、2ヵ月後、憶えていることやら。。。