宇和島地方は他地域と同様にこのところの大雨続きで、日に100mmを越える日もあったらしい。それが原因してか、城の崖面が一部崩落してしまった。
これについては、新聞でもテレビでも報道され、一時300人近くの人が見学に集まったほどだそうな。
緊急的に聞いたときは石垣が崩落したのかと思ったが、詳細には石垣は安泰でビクともしていない。宇和島城二の丸石垣の直下で、平成10年頃からの宇和島城石垣大改修で最初に取り上げられた積み直し部の直ぐ下の自然傾斜面が崩落したのである。
それは何に基づくのか。表面からは見えない谷状の水道からの流出水によって押し流されたものらしい。石垣基底石より下方を底とする水道であるから、崩落斜面には水の吹き出しが見え、その流痕が崩壊斜面の上に残っている。
もしこの上部の石垣の積み直しをやっていなかったら、多分、石垣もともども崩落していただろう。
この事例は城の保全管理の難しさに問題を投げかけている。普通石垣は背後に厚いグリ石の控え積みを入れて、表面流の処理を行っているが、山の改作や石垣によって目隠しされ、地下に潜っている水道が崩壊要因となると、どこでそれが噴出するか把握は容易ではない。
ここ2~3年、愛媛では水による文化財崩落が続いている(鬼北等妙寺、松山城、宇和島城石垣)。その理由は遺跡によって区々であるが、遺跡保護にとっ
て雨ほどやっかなものはない。上のほうに石垣はしっかり残っている。