愛媛県西予市教育委員会では、下記要領で表記の展覧会を催している。
会場:西予市宇和先哲記念館1階市民ギャラリー(西予市卯之町4-327 0894-62-6700)
期間:1/4-1/29(日) 9:00-17:00 月曜休館
料金:無料
連絡先:西予市教育委員会 文化振興係 担当:高木 0894-62-6416
まあ、何というお宅な展覧会と思いきや、これが主目的でなく、老若男女の市民と共に学習し、作り、使ってみた石庖丁体験のなかで得られた問題点を整理し展示した催しです。
単なる収穫して食べてみたという、娯楽愉悦の美味しいとこどりのよくある体験学習?ではなく、特に製作途中の困難さ(難儀してこと)が問題提起となって、それを石庖丁論に反映しているところが成果である。
つまり、①市民参加による利活体験であるとどうじに、②それによって得た問題点と解答をもう一回り廣く、多くの住民に還元するということだから、一粒で二度美味しいどこかのキャラメル利活である。埋蔵文化財活用事業という税金を使っての催しであるが、その費用対効果の点からも申し分ない使い方といえよう。
南予出土の石庖丁が集成展示してあって、南予における石庖丁の分布傾向が判り、これはまた、1/28の鬼北町興野々寺山遺跡シンポにも連動してゆく。
最大の成果は①何故に南予も含めた瀬戸内の石庖丁は規格性に弱く、多様で緩んだ形態のものが多いのか。
②穿孔途中での放棄品や箇所替え穴開け例があるのか と言ったあたりの体験的解答を得られたことで、これは学問上の石庖丁論にも有効性をもつ可能性がでてきた。
そのためには、単に南予の素材だけでなく、中央構造線上の各処の結晶片岩(さしあたり、紀ノ川、吉野川中、下流)を採取して製作実験する必要はあろうが、それ次第では、素材論で済むのか、技術論、性格論などに広がって行くのかで次の展開が見えてくる。このように一般対象の事業としての成果だけでなく、学問的意義もあり、こちらも一粒二度美味しい展開となっている。
その問題を実際に体験できるコーナーも設けられているが、試みているのを見ると、まず形態(外形)を整える段階でヘマっていた。ヘマしなきゃ人間は進化しない。美味しいところどりでは何にも得る物は出てこないよ。教育、いや人間活動の基本だ。
体験報告パンフもこの間の問題と成果がよく整理されており、まとまった冊子であるので、興味ある人は早く行って貰ってきた方がよい。あまり平積みされてなかったが、見えないところに余裕があるかもしれない。
でも、ほめてばかりで、満点をやる訳には行かない。
ケースを並べ、パネルが一々に添付された整然とした奇麗な展示ではあるが、①展示品とパネルが乖離している。つまり文字説明に重点がありすぎて、モノそのものからの読み取れるような誘導、支持などが足りない。展示は極端に言えば、文字は不要であるのが望ましいのです。ここの場合、発掘品はともかく、他は試作品や原材なのであるから、剥き出しに、直接それに説明を加えればいいのではないかな。遺物以外はさわってもらった方が良いのではないか。
②にパネルの字数が多すぎる、しかも字が小さい。これはよっぽどの好き者以外読まないパターンの典型です。
総括して言えば理解して貰うのに言葉に頼ろうとしすぎている。したがって、その姿勢はパンフとして良く成果となっているが、展示手法としては問題を残す。意欲は買わねばならないが。
この市は南予最大の遺跡の集積地として、かつ広大な古代宇和郡の中心地として弥生-古墳-古代に渡る多くの貴重な資料を蓄積している。文化財は国民の財産と規定されているのに、その国民、住民、市民に税金で調査したにもかかわらずいっこうに還元しようとしないのはいかなる理由によるのでしょうか。この市の向き合う行政姿勢によるのかな。
壁面にパネル、手前にケース。奥に実験場がチラリ