見過ごされてきたホルマリンの毒性 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

ホルマリンという液体について、
名前を聞いた事はあるけれど、どんな物かは知らない。

という人がほとんどなのではないでしょうか。

このホルマリン、
人体にとっては相当に有害な液体なのですが、

医療にとってはなくてはならない液体です。

その強い臭いは一度嗅いだら忘れられないかもしれません。

明らかに、
うわっ、体に悪そう、と思える臭いです。

そんなホルマリンが何故、
医療では必要かというと、

生体組織の固定と防腐に使われるからです。

他の分野では、
菌や細菌の消毒の目的にも使われているようです。

ホルマリンとはホルムアルデヒドという化学物質の水溶液です。

このホルムアルデヒドは細胞内のタンパクなどに結合し、
タンパクを変性させることで正常な活動を止めてしまうようです。

これによって細胞内の酵素などの反応を止めてしまい、
死後変化をストップさせてしまうのです。

これによって、
ホルマリンによって生体とは全く違った状況にはなるもの、
それ以上に腐敗などの変化が起きることを止めることが出来ます。

医療現場ではこの特性を生かし、
手術で摘出された腫瘍などの検体の固定にホルマリンを使います。

こうして固定された後に、
顕微鏡などで観察される標本になるんですね。

この辺りは病理医の専門領域です。

さて、
ホルマリンは生体にとってはかなり有害な物質なのですが、

実際の日常診療において医者がホルマリンを扱うシーンと言えば、
手術によって採取した検体をホルマリンに浸すことくらいです。

その一瞬だけなので、
あまりホルマリンに暴露されるということはありません。

ホルマリンの毒性がそう気になるほどの暴露はあまりないのです。

日常的にホルマリンに暴露されるのは病理医くらいではないでしょうか。

病理医は業務の中に解剖があるので、
その際にはホルマリンに暴露されます。

ちなみに医学生はかなりこのホルマリンに暴露されます。

それは解剖実習を行うからです。
解剖で使う献体は全てホルマリンで固定されています。

たとえば、
解剖学実習室の空気はホルマリンで満たされています。

そして、こういった実習室のホルマリン濃度というのは、
作業環境などの法で定められた濃度を遥かに超えています。

病理解剖の行われている部屋の空気中の濃度も同様でしょう。

そして、
その高濃度で有害なホルマリンに対して、

通常の医療現場で行われている対策は、
ただの使い捨てのマスクだけなのです。

本来であれば専用の防毒マスクが必要なところです。

ホルマリンは細胞に毒性があり、
長期間に暴露されれば発がん性もある物質です。

高濃度のホルマリンに暴露された人の鼻腔の細胞を調べると、
なんらかの染色体異常を認めるという事も知られています。

もちろん、
短期間の暴露であれば、発ガンするなんてことはまずないのでしょうが、

ホルマリンが有害な毒物であるということは確かなことです。

当然、
そんな事は遥か昔から分かっていた事だと思います。

にも関わらず、
たとえば、「医学生は解剖するのだからホルマリンに暴露されて当前」

といったように、
少し手段を考えれば避けられる暴露から目を背けるといった風潮があります。

放射線被曝しかり、医療の世界ではこういった事は少なからず、
良く見られることだと思いますが、

一般的な常識で考えれば有り得ないことでしょう。

どういsてこういった簡単な事が徹底されないのだろう??
と首を捻ってしまう事は未だに多いのです。

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