宇宙は、サピエンスが考えるほど、
サピエンスに都合よくできてはいません。
そこには法則と秩序がある一方で、
偶然と予測不能性も満ちています。
かつて私は、科学が進歩しても、
サピエンスを遺伝子に刻まれた基本設計から
大きく作り変えることは難しい、
少なくとも私たちが生きている間は、
そう考えていました。
この認識は、半分は今も正しいと思います。
人間の身体や感情、
他者とのつながりを求める性質は、
短期間には大きく変わりません。
しかしAIは、
人間の身体そのものを作り変えなくても、
記憶、判断、創造、対話の力を外側から拡張し、
人間の生き方を変え始めています。
遺伝子は、
人生を決める完成図ではありません。
人は、身体的な基盤を持ちながらも、
環境、文化、出会い、学び、
そして自らの選択によって、
変わり続ける存在です。
だから今、問うべきことは、
AIが人間を超えるかどうかだけではありません。
私たちがAIとともに、
何を変え、何を守り、
どのような未来を選ぶのかということです。
AIは、答えを決める主人ではなく、
人間の可能性を広げる伴走者であるべきです。
目的を定め、結果を確かめ、
責任を引き受けるのは人間です。
効率や最適化のために、
尊厳、身体性、自由、
そして人と人とのつながりを
手放してはなりません。
では、不確実な世界の中で、
サピエンスの未来を見据え、
日々幸せに生きるとは、
どういうことでしょうか。
おそらく、
一人ひとりが自らの価値を選び、
人と人とが連帯し、支え合い、
AIとも賢く協働しながら、
生きる意味と喜びをともにつくることです。
人がAIを育て、
AIとの対話によって人もまた育つ。
遺伝子にも、慣習にも、
アルゴリズムにも、
未来のすべてを決めさせない。
人間の尊厳を中心に置き、
人とAIが共に学び、共に育ちながら、
よりよい未来を選び続ける。
そこに、これからのサピエンスの幸福を
求めていくことが肝要だと思います。