妻と娘2人を連れて、釣りに出かけた。


溺れるのも嫌なので安全な場所をと、


防波堤沿いで、ライフジャケットを装着させ、念の為、浮き輪を浮かべ紐で固定し、さびきでアジを狙う。

 

下娘は慣れたもので、仕掛けを渡すと手返し良く豆アジをひっかける。妻が外し、クーラボックスに入れる。

 

時間帯によっては、良型のイワシが釣れた。


上娘には、1本針の先に石ゴカイをつけた仕掛けを持たせ、


型の良い何かが釣れればいいかなと思い

、娘に託す。


釣り竿の先には鈴をつけてある。魚がかかれば鈴が鳴って知らせる親切な仕組みだ。


私と下娘がアジ釣りに勤しんでいると、チリンチリンと鈴が鳴る。


上の娘が、


『 父ちゃん、鈴なってるよ! 』と。


下の娘は、羨ましそうだ。


竿先の反応は、ビクンビクンと、なかなかのしゃくり具合。


カサゴか、根魚でも釣れたのだろうかと思い、一度合わせて針がかかったのを確認し、上娘に渡す。


娘は不器用ながらもリールを巻く。ま、バラしても、ひっかけても、それはそれで良い思い出か。


ぎゃーぎゃー喚きながらリールを巻く上娘に、周りの釣り人は微笑ましく見ている。


もう少しは魚影が見えるかな…となる頃、不意にプツンと、針が外れる。


…。


ま、そんなもんか。


上娘が残念がるかと思いきや、


上娘『 すごく大きかったね!こんなにあったね! 』と、


手を全開に拡げて、まだ見ぬ魚の大きさを興奮気味に話す。


私『 おー、そうだな。次は釣れるといいな。 』


やり取りをしていると、釣りを終えたおじさんが話かけてくる。


釣りおじさん『 ほうか、ほうか。お嬢ちゃん、そういうのを何て言うか知ってるか?  』


上娘『 えー? 』


釣りおじさん『 逃がした魚は? 』


上娘『 泳いでる!! 』


…。


…。


…正解!!


釣りおじさん『 そうやなぁ、お嬢ちゃん賢いなぁ。熱中症気をつけなよ、コレあげるわ。 』


と、ペットボトルのお茶を2本渡し、そのおじさんは帰っていった。


長い人生の中で、新たな言葉を手に入れた。


…逃がした魚は、泳いでる。


海の恵みと、学びに感謝。


イワシは素焼き、


豆アジは素揚げにして頂こう。