某大学病院から派遣された精神科医師は、


某大学病院からお叱りを受け、


予定された旅行には行かずに、病院に舞い戻ってきました。


外来業務に追われる上席医に謝罪し、


何とか許しをもらい、病棟に上がってきましたが、


看護師からの冷ややかな視線と、


まるで、居ないかのように行き来する露骨な様子に、


居場所がなく、ずっと病棟の端に立っていました。


病棟看護師から、存在を無視され続けた精神科医師は、


そのストレスに耐えきれず、


ほどなくして、


病棟の端で嗚咽を始めました。


アピール嗚咽を見抜き、その程度では見向きもしない精神科病棟の手練れ看護師勢。


それを見ていた患者様が、ナースステーションのカウンター越しに、看護師に言いました。


『 あの人、大丈夫ですか? 』と。


…。


その先生は、その患者様の主治医でしたが、何より病棟に一切上がってこないので、


その患者様には、


ただの、


嗚咽する可愛そうな人と、


認識されました。


…。


看護師は言いました。


『 大丈夫ですよ。 』と。


精神科医療では、大丈夫ですよと聞かれたら、大丈夫ですよとしか返ってこないので注意が必要です、と言われています。…私は、患者様に『大丈夫です。 』と言ってもらい、自己暗示をかけてもらう為に、大丈夫ですか?と聞く時はあります。


その先生は、日勤が終わる頃も、その場に立って居ました。


その精神科医師は、二度と来ることはありませんでした。