道しるべの道しるべー3 | 絵本で、安心して気持ちが話せる「場づくり」の担い手を育む

絵本で、安心して気持ちが話せる「場づくり」の担い手を育む

~絵本で、安心して気持ちが話せる場づくりの担い手を育む~
NSプロジェクト代表
絵本道®マイスター
更家 なおこ

「道しるべ」の歩きかた

一人でみる、二人でみる、ワークショップで使う…。

ここでは、絵本「道しるべ」のいろんな歩き方をご紹介します。

 

「道しるべ」を一人で味わう

 静かな場所を選んでゆっくり一人でみてください。そのときふと

手が止まったページについて、自分の心と対話してみてください。

「なんでこのページが気になるのかな」と自分に問いかけてみます。

決して自分を責めたり悪者探しをするのではなく「ああ、自分は

今こんな気持ちなんだ。」「この気持ちを閉じ込めていたんだな。」と

自分自身の内側を確認することに集中してみてください。

 

 一人で味わっているとき静かにこみあげてくる涙はそのまま

流してあげてください。ようやく外に出すことができた、

あなたが手放して良い感情です。「ありがとう」と心でささやいて

見送ってください。

 

「道しるべ」を二人で味わう

 静かな場所を選びます。ゆったりできそうなソファなどが

向いています。相手の横に腰掛けますが、左右どちらが

落ち着くのか、相手に聞いてみてください。

一人がゆっくりページをめくりますがお互いに黙ってみていきます。

最後まで見終わってから、どんなことを思ったのかを伝え合います。

そして「気になったページ」について話せる範囲で「どうして気に

なったのか」を伝え合います。

聞かせてもらっている時は「うん、そう思ったんだね。」とうなづき

ながら静かに聞いてください。

 

 相手の感情や思い、物語を聞くことで自分自身のことが引き

出されることがあります。その場合は十分に相手の言葉を

聞いてから「話してくれてありがとう。それを聞いて思い出した

ことがあるんだけど話していいかな」とはじめます。

きっとお互いが深いところでつながっていたことが確認できて

とても穏やかな気持ちになるでしょう。

沈黙ができても大丈夫です。

沈黙している時は「心の中で一生懸命おしゃべりして

いるんだな」と思って言葉が出てくるまで待ってください。

 

 十分に伝え合ったら「一緒にみてくれてありがとう」と

感謝の言葉で絵本を綴じます。

※声に出して読むという味わい方もありますが、

「道しるべ」の場合はその人が心の中でつぶやいている

声のトーンや間などで進めていくほうが絵本の世界に

入りやすいようです。

できれば無言でゆっくり時間をとって味わうことをおすすめします。

 

ワークショップで使う

 私は「自分の気持ちと向き合うことを体験する」

「心と向き合った人との対話を練習する」目的で多く使って

きましたが、ほかにも使い方は様々あると思います。

「道しるべ」をワークショップで使う場合は、参加人数分を用意します。「道しるべ」を配布して10分ほど自由にみてもらったあと、

参加者全員から

「何を感じたのか」

「どこのページが気になったのか」

「ラストシーン」で何が見えたのか

等について伝え合います。

通常は集団の中で心の内側を語り合うまでなかなか

警戒心がとれず、形ばかりのワークになりがちですが、

この絵本を使うことで短時間に深い感情を客観的に

語り合うことが可能にるので、ワークの範囲が広がります。

 

 「自分の気持ちと向き合うことを体験する」目的の場合は、

参加者の語りが一巡したところで「今のを聞いて何か

思い出したり伝えたくなったことはありますか」と問いかけて

ください。

 

 多くの人が自分と似た思いを抱えていたり、同様の物語を

持っていることが発見できて「人はみなどこかでちゃんと

つながっているんだな」と確認できるとても貴重なワークに

発展するでしょう。

 

次にワークショップのカリキュラム例を紹介していますので、

ご自分でワークショップを企画されている方は参考にしてください。

 

参考:「道しるべ」ワークショップ:ベーシック

 

 ここでは最もシンプルで基本的なワークショップの

カリキュラムを紹介します。

何人かで共有する際の参考にしてみてください。

 

目的:「気持ちと向き合う体験をする」

所要時間:2時間程度(参加人数により変動)

 

1.チェックイン:導入ワーク

・インストラクター自己紹介と絵本読み語り

・安全な場づくりについて

(ここは気持ちを話してもよいし、話さなくてもよい、誰からも

 否定されない安全な場所であることを参加者と一緒に確認します)

2.ひとこと自己紹介

・自分のこと(好ましい呼ばれ方・自分について話したいこと)

・絵本から感じたひとこと

3.「道しるべ」紹介

・なりたちとワーク案内

・「道しるべ」ワーク:黙読と共有

4.チェックアウト

・終わりと感謝の言葉

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