引き続き芥川賞候補作を読みます!

今日は文學界新人賞受賞作でもある

年森瑛さんの「N/A」(文學界2022年5月号)。

 

 

主人公は大学進学を控えた

高校生のまどか。

 

 

都内の中高一貫女子校に通い、

長いつきあいの同級生からは

「松井様」というあだ名で

校内の王子様的なキャラが

確立されていました。

 

 

まどかは王子様を意識していたというよりは

自分に備わっている女性的な機能を嫌い、

毎月血が出てくる生理が特に嫌いで

中等部からわざとダイエットをして生理を止め

親を困惑させていました。

 

 

高等部に上がっても

生理に慣れ、恋愛に色めき立つ

同級生に共感しきれず、

 

 

まどかはこんな自分を全肯定し、

ありのままを受け止めてくれて、

恋愛関係というよりは

「ぐりとぐら」のような関係性でいられる

「かけがえのない他人」を求めて

年上の女性とお試し交際をしてみるのですが

恋愛を求めてくる相手にまどかは引いてしまい、

 

 

やがて嗅覚のするどいクラスメイトが

まどかの交際相手を知り、

さらには交際相手が

無断でSNSにまどかのことを

書きつけていることを密かに告げられ

 

 

まどかは自分が「まどかという個人」ではなく

「中性的な女子」「LGBT当事者」

「拒食症の女の子」などと認識され

親や友達から配慮されることに

心からうんざりしてしまいます・・。

 

 

タイトルの「N/A」は

「該当しない」という意味の略語。

 

 

まどかは自身の個性として

生理を嫌い、

生理を止めるために痩せ、

恋愛関係に興味を持たないだけなのに、

 

 

まわりからどれにも該当しない

検討違いのカテゴライズをされ、

「まどか」という個人を

そのまま受け入れてくれないこと、

「そういう人」として傷つけないように

配慮された言葉選びをされることに

苛立ちと反発を覚えます。

 

 

結局まどかは

苛立ちや反発をどうにもできず

「かけがえのない他人」に

なれそうもない交際相手と別れ、

引き続き生理を嫌い、

親や友達から配慮され続ける

日常を送るのですが

 

 

まどかの苛立ちと反発は

解消されないばかりか

むしろ物語のクライマックスで

ブーメランのように

自分に返ってくるのです・・。

 

 

血を嫌う女子高生の話ですが

生理の話題が出てきたり

クラスメイトが鼻血を出したりと

わりと血の描写が多く、

さらにクライマックスも「血」で、

読みながら鉄の味がしてきそうなほど

血なまぐささを感じながら読みました。

 

 

ただの子どもだったのが

血を出したとたん

「女性」としての機能が

どんどん目覚めはじめ、

 

 

親や異性からこれまでと

違った目で見られることへの

戸惑いとむず痒さに

耐えきれなかったまどかが追求してきた

「どこにも属さない」という「個性」は

物語後半からどんどん

崩れていく展開になっていて、



コロナで窮状に陥るクラスメイトに

かける言葉を失ったり、

「血」の「ブーメラン」が返ってきたり

 

 

配慮されることに苛立っていたのに

配慮する側になった途端に

自分の無力さに呆然としたり

最終部ではとある人の配慮に

助けられたりしていて、



自分のことばかり考えていた

まどかが他者の目線を獲得していくことで

「個性」がどんどんなりを潜めていって

物語は幕を閉じるのです。



「個性」が行き場を失っていく過程での

感情の揺れ、不安定さは

未熟で、勢いがあって、

血なまぐささもあいまって

「若さ」をものすごく感じました。



10代、高校生のころは

自分のことだけ考えていても

許される年齢ですが

そろそろ思春期も終わり、という

年ごろでもあって。



そんな年代の絶妙な

感情の揺れ動きが

丁寧に掬い取られた作品だと感じました。



いまどきの若い子は

「多様性」という感覚が骨身に染みていて、

すごく物分かりの良い子ばかりなんだな〜と

クラスメイトが配慮するシーンを読んで

感心しました。



でもその物分かりの良さが

逆にウザいという側面も描かれていて、

人間の感情の厄介さを

肌身に感じさせられました・・!



自分の高校生時代は

はるか昔だけれど、

かなり自己中で自意識過剰で

自分のことばかり考えていた

記憶があります)^o^(



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