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前回はこちらです。

 

 

メガギラスを倒したのに進撃を続けるゴジラ。

ここら辺からゴジラの進撃の謎と人類サイドの不穏さが合わさり雲行きが怪しくなります。

 

 

かつてゴジラを引き寄せ破壊を招いてしまったから封印されていたプラズマエネルギー研究が実は密かに杉浦基彦によって東京で続けられていた、そのためにゴジラが進撃して来たという真相解明。

 

 

杉浦基彦は研究継続は自分の地位と名誉のためではない、プラズマエネルギーが日本にもたらす莫大な富とそれによる国益のためだ、どこの国にも表沙汰に出来ない事はあるものだと述べます。

 

 

これ、どうなんでしょうね・・・。

確かに国が儲かって繁栄すれば社会全体の問題解決や機能向上に避ける予算も人員も増え、福祉も充実し、人々の幸福度も上がるし救われる人も増えるかもしれない・・・

国際的な地位や存在感も高まり、諸外国との関係性、外交なんかも有利になるでしょうし。

貧乏国家になればなるほどそこら辺は難しくなっていくのでしょうし・・・

 

 

しかし、そうは言っても人命に関わるどころか首都壊滅させたレベルのゴジラという制御不能、対処不能怪獣を引き寄せるものに手を出して良いのか・・・?

それこそゴジラによって国が傾く、国が終わりかねないわけですし・・・

良くて却って国益を損なう、悪くて国益とか言ってる場合ではない事態に・・・

 

ゴジラシリーズと切っても切り離せない原発を連想しますね・・・

ただ、ゴジラによる破壊は原発事故がもたらす被害すら遥かに超えかねないのでは・・・?

 

 

「それに中性子対策は完璧だった」と杉浦基彦は言っているので科学的対策によって絶対にゴジラ被害には結びつかない自信があったようですが、実際にはそれを上回っていたゴジラに感知されてしまってるんですよね・・・

絶対にリスクは回避できる公算の下で着手しても想定を超えた事態が起こり大災害に繋がった。

 

しかも本作の日本は昔ゴジラによって原発が破壊され遷都までしたからもうゴジラを引き寄せないために原子力発電を破棄してる、その後にゴジラを引き寄せない原発級エネルギーとしてプラズマエネルギー開発が進められるもやはりこれもゴジラに破壊され凍結されたという歴史なのを考えると、より観点が複雑になるというか、業が深いというか・・・

 

 

更にこの映画は2000年制作で、その後の2011年に原発事故が起きたことを踏まえると・・・

もっと難しい問題に感じられます。

完璧だったはずの中性子対策を超えて襲撃して来た本作のゴジラを自然災害(津波)に例えたらまんま2011年の原発事故(想定を超えた津波によるもの)のように思えますし。

そもそもゴジラは自然動物で、元々からして自然の象徴とも捉えられるわけですし。

 

 

難しすぎる・・・。

 

 

プラズマエネルギー開発継続のためにゴジラはやって来た、そのためにどれ程の人命が犠牲になったんだと非難する桐子。

 

「だからこの日のためにGグラスパー(桐子ら対ゴジラ戦闘部隊)を組織したんだ!とんだ役立たず集団だったがな!!」

 

と罵倒した瞬間に桐子によって殴り飛ばされる杉浦基彦。

「みんな無駄死にじゃないですか・・・!」という桐子の言葉が辛い。

 

 

この点は完全に杉浦が悪いかと。

命を張ってゴジラと戦ってる部下に役立たず集団呼ばわり。

しかもそもそも自分が密かにプラズマエネルギー研究を継続したせいでゴジラが来てるのに、それによる犠牲者達への指摘を「お前らが役立たず集団だからだ」と返すなんて自分の棚上げも良い所ですし。

ただでさえゴジラ進攻による過去そして現在進行形の被害に憤っている桐子からしたら激怒どころじゃないです。

 

 

ディメンション・タイドでゴジラを倒す作戦を立案できたんだから、せめてゴジラを倒す事に成功してからプラズマエネルギー研究を再開してればな・・・。

それすら歴代ゴジラがそうだったようにゴジラが1匹だけとは限らないのでまた違う個体がいずれ引き寄せられるかもしれませんが、少なくとも今いるゴジラを倒せてもいない内にそんな事をやるよりずっと良いはず。

 

と考えるとプラズマエネルギー研究継続は「(杉浦の)自分の地位と名誉のため」という指摘の信憑性も上がる気もします。

自分の利益のためならば少しでも早くから研究を再開した方が得でしょうから。

 

酷い物言いなシーンですが、この時の伊武雅刀さんの演技の迫力は凄かった。

何度も繰り返し見ました。

 

 

そしてもうメガギラスは倒されてるのにまだハラハラさせる熱い展開が待っていたのも良かったですね!

制御不能になり大気圏へ突入し自壊し始めたディメンション・タイドを自身の命が失われるかもしれない危険な作戦によって最後にゴジラへと狙撃させる作戦に出る桐子!

ずっと持っていた亡き上官のドッグタグをグリフォンのコックピットに掛けて敬礼するシーンが印象的でした・・・

上官の存在をグリフォンに託し、その機体ごとゴジラに突っ込ませる事で渾身の敵討ちの一撃とする、同時にこれでゴジラは倒せるから上官も安らかに眠って下さい、というような心情でしょうか。

 

 

ディメンション・タイドの発射ボタンを押す作業を工藤元が「俺にやらせてくれないか、あいつの命が掛かってるんだ」と申し出るシーンも熱いしカッコ良かった。

やっぱり本気で桐子が好きなんだなと思えると同時に、そんな好きな相手の命を直接自分の手で奪ってしまう結果になるかもしれない作業を敢えて自ら買って出るその覚悟と度胸がスゴい。。

 

 

桐子はこのまま機体と一緒にゴジラへ特攻する気なんじゃと見てて焦りましたがちゃんと寸前で緊急脱出していて良かった。

 

 

そして上空からの特攻を喰らったゴジラの大炎上が派手で燃えます。

 

 

雲を歪めながら地上の瓦礫を吸い上げ迫りくるマイクロブラックホールの図も迫力。

ゴジラはこうして雲が歪められるより前に異変に気付いて頭上を仰ぎ見てるのも流石の大物感あって好きです。

 

 

そしてマイクロブラックホールの吸引に体を震わせながらも熱線を放ちぶち当てて迎撃するゴジラの図もカッコ良かったですねぇ。

 

 

マイクロブラックホール地上直撃の瞬間の画も良かった。

 

 

破壊痕もよく造られてます。。

 

 

生還し、全てが終わった街を見つめる桐子のカットも良かった。

 

 

桐子は強い意志の宿ったような眼差し、表情が終始印象的でした。

 

 

ゴジラの消滅した街を見る桐子の胸中はさぞ万感の想いだったでしょうね。。

 

 

間を置いて再び工藤元がいる秋葉原の様子が映るんですが、ここが気になります。

ケーブルの繋がったゴーグル?を装着して歩く外国人?の姿が一瞬映ってます。

 

これ、何?こんな日用品?あるの?

 

これが冒頭で書いた「もしや本作は技術が進んだ世界なのか?と思える描写」の1つですね。

こんなSFチックな物を、それも2000年に通行人が普通に使ってるのはそういう事なのかな?と。

(これで普通に当時実在した物体だったらどうしよう)

 

 

骨折が痛んだ工藤元に対し最後の最後、桐子が柔らかな「あ、ごめん」という声と表情を見せた瞬間に画面は停止。

そしてエンドロールへ入る流れも好きですね。

ゴジラは生きている可能性があるけど決死の作戦を終えた事で、本編でとても力強く硬い態度だった桐子は少し肩の荷が下りたのかなとも思えますし、単純に工藤元の事が少し好きになったのかな?とも思えますし、

そういう感情が垣間見えたところで終わり、という。

 

 

ゴジラはマイクロブラックホールで倒されたのか~人類の危機は去るものの何だか残念だな~という気持ちだったところに消滅していなかった可能性が示唆されたのは嬉しさもありましたし、エンドロール後にあの少年目線でゴジラ自体の姿は直接映さないものの振動と鳴き声、少年の驚いた反応で間接的にゴジラ再登場を演出した瞬間に映画が終わるのも好きでした。

 

 

という訳で、面白かったですねぇ。

 

 

 

完全に好みの領域ですが不満を2点あげるなら、1つ目はエンドロールの音楽ですね。

本作はゴジラによる殉職と復讐、エネルギー開発問題などゴジラ映画らしい重い要素を描きつつも作風自体は子供向け色を意識したのか軽やかな感じだったので、自分としてはエンドロールの音楽はもっと明るい、軽快な音楽が好みだったと今は思っています。

物凄く重暗い音楽が流れ出すので、映画全体の空気感及び直前の桐子の柔らかな感情の露出と温度差がありすぎて感情の持って行き場に困った面がありました(曲自体は良いのですが)。

 

 

ただここはDVDだと1個のチャプターとして区切られてるので、分かってしまえば桐子が「あ、ごめん」と言って映像が停止した瞬間にチャプター送りすれば一気にエンドロール後の少年パートへ移行する最終手段も一応可能です。

移行直後はまだ重暗いエンディング曲の終わりかけが流れてるので少し聴く事になり、重暗い気分に若干なりますが。

 

なので配信はともかく円盤なら2度目以降はその気になればその方法が使えますね。

ただこれもあくまで現時点での印象なので、繰り返し見て行ったら気にならない、むしろこの曲の方が良いという印象に変わっているかもしれません。

 

 

もう1つはシンプルに、本作はゴジラの熱線発射音がかなり静かな事です。

単純に「もう少し大きな音を鳴らしても良かったのでは?」と思うというだけです。

これも上記の点以上に好みの範疇だと思います(笑)

 

 

本当は工藤元のオリジナルOSでディメンション・タイドのシステム復旧する際のアバター?が飛びながら故障個所にレーザーを撃っていく映像もちょと毒気を抜かれたので別の表現の方が・・・という気もするのですが、

本作は子供向け色が強いですから全面的に子供向けに振っていると思われるあのシーンを挙げるのは違うかなとも思うので。

 

 

という訳で、見返したら昔の印象に反してちゃんと面白いし特撮表現も良いしドラマ面にもゴジラシリーズらしい要素もあるしで、いやあ良かったですよ!

この調子で残りのミレニアムシリーズも見返したいですね!