音楽ホテルを経営する前は大阪でピアノの先生をしていました。
その頃小学校1年生のゆきちゃんという、かわいい生徒さんが
バッハの有名なメヌエット(ト調)をレッスンしていました。
丁度赤ちゃんだった長女に見せようと、私の子供の頃の絵本
「シンデレラ」を引っ張り出してきていて、ゆきちゃんに
見せる事ができました。
この本は年の離れた姉からのおさがりで、今見ても美術的に
大変美しく、人形にちゃんとその当時の衣装を着せ、写真に
撮った絵を本にした、非常に贅沢で手のかかった絵本でした。
そんな絵本を出してきた同じ頃、先ほどのゆきちゃんは何度
言ってもメヌエットを超特急の速さで弾いてしまいます。いくら
「優雅に」とか「もっとゆっくり」とか言っても、どうしても
すごく速くなります。
そこで私はゆきちゃんに先ほどのシンデレラの絵本を見せて、
「ほら、こんなドレスを着て、こんなかつらをつけてとっても
重いのに、そんなに速く踊れないよ」と言いました。
するとゆきちゃんはその絵本を見せただけで、演奏ががらりと
変わったのです!小さいながらに納得したのでしょう。とても
ゆっくり弾くようになりました。また舞踏会の様子や3拍子の
踊りの曲というメヌエットの意味も分かったようです。
この絵本は時代にかなり忠実で、普段のシンデレラは金髪。
舞踏会に行くときは銀毛のかつらをつけています。またその他の
絵もかなり時代にそっていたようです。
舞踏会のシーンでは王子様のヒールのかかとが赤く、これは
王家の印だそうで、長野のホテル時代にドイツで長く活躍された
プロのオペラ歌手のお客様からお聞きし、「なんと忠実な」と
お褒めをいただきました。オペラの方だから分かったのでしょう。
私が褒められたのではありませんが
こんなゆきちゃんの変わりようを見て、それから色々な童話を
調べ、レッスンに取り入れるようにしていきました。
著作権があるのでその絵本は直接お見せできませんが、以下に
載っていました。シンデレラの金髪とかつらが違います。
〇スペクリ古本社 http://supekuri.shop-pro.jp/?pid=20267490
トッパンのストーリーブック 人形制作 川本喜八郎
♪メヌエット
この経験から、ホテル時代のお料理は「音楽家が何を食べたか」
を同じ国、同年代の童話をさぐって作り、お出ししていました。
また後に「音楽と童話の講座」も開きました。
そのお話はまたいつか!