〔週刊 本の発見〕『JRは生まれ変われるか~国鉄改革の功罪』 | 市民自治ノート - NPOまちぽっとから

市民自治ノート - NPOまちぽっとから

 このブログは、NPO法人まちぽっとスタッフの伊藤久雄が書いています。このブログでは、「市民自治」の推進に必要なさまざまな情報や、NPO法人まちぽっとの活動などを発信していきます。

〔週刊 本の発見〕『JRは生まれ変われるか~国鉄改革の功罪』

 

JRのこれまでとこれからを考える本

『JRは生まれ変われるか~国鉄改革の功罪』(読売新聞経済部・編、中央公論新社、本体1,800円、2023年10月)評者:黒鉄好

 

 日本で最初の鉄道が開業してから150年の節目を迎えた2022年、新型コロナ禍で日本の鉄道は一気に苦境に陥った。日本の鉄道の歴史的転機になると見た読売新聞社は独自取材班を編成。2022年7月から紙面連載した「JR考」を再編集したのが本書だ。

 

 最も読み応えのある場所はどこかと聞かれたら、最初と最後だと答えたい。第1章「限界~公共交通機関のジレンマ」では、いきなり旧運輸省「機密文書」をあぶり出す。「取扱注意」の印が押された「国鉄改革の記録」だ。国鉄分割民営化3年後の1990年、運輸官僚によって作成され、ごく一部の関係者にだけ配られた。「分割民営化は地方ローカル線の廃止に拍車をかけることになるのではないか」――バブル経済に乗って世間がJRを順風満帆だと思っていたこの時点で、一部運輸官僚はすでに今日の事態を予見していたのだ。

 

 第10章の後ろに付け加えるように置かれた「番外編 予算編成」も読み応えがある。2023年に施行された「改正」地域公共交通活性化再生法を踏まえ、JRローカル線「再構築事業」に国の予算を投入できるようにしたい国交省と、その阻止をもくろむ財務省の攻防が描かれている。最終的には、新たな財政支出を求めず、国交省内部で旧運輸省関係公共事業から鉄道へ、予算配分を変更することで決着した。

 

(以下、略)