相続→売却→解体工事計画により大けやきが伐採の危機に 条例を根拠に樹木診断実施の要請 | 市民自治ノート - NPOまちぽっとから

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相続→売却→解体工事計画により大けやきが伐採の危機に 条例を根拠に樹木診断実施の要請

 

→杉並区が樹木診断実施を指導

 ディベロッパーによる樹木診断は、空洞率を根拠に「倒木の恐れ」

 都街路樹診断マニュアルの判定基準は、空洞率から活力度に変更されていた

 

連載「権利に基づく闘い」その38

 └──── 熊本一規(明治学院大学名誉教授)

 

 昨年7月以来、杉並区西荻窪の大けやきを保全する運動に取り組んでいます。昨年8月のお盆過ぎに伐採される予定でしたが、運動が奏功し、現在も大けやきは健在です。

 以下に経緯を記します。

 

◎相続→売却→解体工事計画により大けやきが伐採の危機に

 

 杉並区にあった三峯神社(分社)の土地は、地主I氏の邸宅に隣接しており、I氏によって管理されてきましたが、I氏の逝去に伴い、相続人によって売却され、ディベロッパー(清水総合開発)の手に渡りました。神社のご神木であった大けやきは、杉並区の保護樹木に指定されていましたが、相続人によって指定解除が区に申請され、解除されました。三峯神社(分社)も、ディベロッパーが土地購入後、本社(秩父三峯神社)に廃止を申し入れ、廃止されました。

 ディベロッパーは、昨年7月、解体工事計画書を近隣住民に配布しました。それによれば、I氏の邸宅が解体されるのみならず、敷地全体が更地化され、したがって、大けやきも伐採される計画になっていました。

 

◎条例を根拠に樹木診断実施の要請→杉並区が樹木診断実施を指導

 

 大けやき伐採の根拠は、「マンション建設に必要な掘削をすると根を切断することになり、倒木の恐れがある」との庭師の判断による、というものでした。

 私たち近隣住民は、「庭師の勘は根拠にならない、樹木診断実施が必要」と主張しましたが、ディベロッパーは拒みました。

 そこで、区内NGOにも呼び掛けて、「西荻ご神木けやきを守る会」を創り、大けやき保全の署名を集めるとともに、杉並区に、「杉並区みどりの条例」9条(何人も現存樹木を保全するよう努めなければならない)違反を根拠に、ディベロッパーへの樹木診断実施の指導を要請しました。

 署名は1カ月で1万名を超える数が集まったうえ、杉並区からの樹木診断実施の指導も得ることができました。

 

◎ディベロッパーによる樹木診断は、空洞率を根拠に「倒木の恐れ」

 

 ディベロッパーによる樹木診断は、昨年10月に根の診断が、11月に幹の診断が実施されました。

 根の診断は、マンション建設のための掘削をしたところ、根がまばらにしかありませんでした。

 そのため、「マンション建設に必要な掘削をすると根を切断することになり、倒木の恐れがある」との庭師の判断が伐採根拠にならなくなり、幹の診断が必要になったと思われます。

 幹の診断結果は、空洞率が50%超及びベッコウタケの存在を理由に倒木の恐れがある、というものでした。

 

 他方、私たちは、藤井英二郎千葉大学名誉教授の紹介で(株)吉岡緑地に引張試験を実施してもらい、日本に2台しかない高度なピカス機器により、根返り倒木も幹折れ倒木もいずれも倒木リスクが低いという結果を得ました。

 また、ベッコウタケに関しては、藤井先生も(株)吉岡緑地も、「樹木の樹勢・樹形から判断される活力度が健全であれば大丈夫。人が細菌・ウィルスに感染しても免疫力が健全であれば大丈夫であるのと同じ」との見解で全く問題視されていません。

 

◎都街路樹診断マニュアルの判定基準は、空洞率から活力度に変更されていた

 

 そのうえ、ディベロッパーの樹木診断(幹)報告書は、「診断方法及びカルテ作成については、東京都が作成した街路樹診断マニュアルに準拠する」と記しておきながら、都の街路樹診断マニュアルの主たる判定基準が、平成26年度マニュアルでは空洞率だったのが、令和3年度マニュアルでは活力度に変更になったことを踏まえていないことも判明しました。

 また、その変更の根拠となったと思われるデータ、すなわち、巨木の場合には空洞率の高さは伐採の根拠になり得ないことを示すデータも藤井先生からいただいています。

 現在、ディベロッパーに対し、1.都の街路樹診断マニュアルの変更を知らなかったのか、それとも2.知っていて知らないふりをしたのか、のいずれであるのかを尋ねているところです。

 

注1:以上の経緯及び関連資料については、

   ホームぺージ http://kumamoto84.net/ を参照されたい。

注2:西荻ご神木けやきを守る運動については、6月23日BSTBS「噂の東京マガジン」 で放映予定。