リニア新幹線、川勝平太静岡県知事の辞任でどうなる?
リニア完成はかなり難しい-理由は環境破壊、財源不足、他
└──── 川村晃生(「ストップ・リニア!訴訟」訴訟団長)
◎ 静岡県知事川勝平太氏が、失言を理由に辞職したことで、リニアが進むのではないかと期待するむきが多いようだ。
たしかに川勝氏が頑として着工を認めなかったことは、リニア工事の進捗に一定の影響があったであろう。
しかし、私たちはそこで、二つの前提を考慮に入れておかなければならない。
◎ 一つは、リニアの工事の遅れは、静岡のみならず1都6県の全地域に及んでいるという事実である。
大都市では、大深度トンネルの掘削が大幅に遅れているし、明かり区間(地上部でトンネルでない区間)の橋脚もほとんど進んでいない。
各地域のトンネル残土の捨て場も、不足状態の所が多い。見るところリニア工事は1~2割の進捗という程度であろう。
したがって、リニアの2027年の営業開始などということは、静岡着工を抜きにしても無理であった。JR東海はそれを静岡のせいにすることで繕ったのである。
◎ そしてもう一つは、JR東海にとって静岡未着工は、リニア中止のイメージを与えてしまう点で、どうしても早い決着が望まれた。
それは実はリニア工事の財務問題にも関わってくる。
そのことを説明しよう。
◎ JR東海が当初予算の5.5兆円では無理と思った頃、3兆円の財政投融資という予想外の福の神が飛び込んできた。
しかし、今後の工事の困難さを考えれば、それでも財政は底を衝く。
その時、JR東海が不足費用を補いうるとすれば、政府に頼るしかない。民間金融はこんな危ない事業に融資するはずがないからだ。
そうなったとき静岡が未着工であったら、政府にも頼みにくい。そのことを考えると、その時までにともかくすべての地域で工事を進め、一定の成果を挙げておかなければならない。
◎ そのためにJR東海は、静岡を悪者に仕立てあげた。多くの不見識な人々が、川勝バッシングに乗りネットは炎上した。そう考えると、JR東海の策は成功したと言えよう。
いずれにしてもマスコミがJR東海の広報部であるかのような報道に終始した。非難されて然るべきである。マスコミは遅延状況の事実に基づいた上で、報道を深めねばならない。
◎ 今後静岡県がどう動くかは分からない。
ただ一つ言えることは、大井川の水問題に象徴されるように、リニアは政治問題としてではなく、科学の問題として論じられるべきだということである。
なお、リニアの工事の遅延状況については、「ストップ・リニア!訴訟」原告団のHPに掲げている。
HP https://linearstop.wixsite.com/mysite