原発事故対策 避難計画は不要なのか | 市民自治ノート - NPOまちぽっとから

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原発事故対策 避難計画は不要なのか

 

 原発は、どれほど対策を講じても事故の可能性をゼロにはできない。

 万が一の際、周辺住民の安全確保を左右するのが避難計画だ。

 それを、まさか裁判所がこうも軽んじるとは驚きを禁じ得ない。

 

 住民が関西電力美浜原発3号機と同高浜原発1~4号機の運転差し止めを求めた仮処分申請。このうち美浜3号機と高浜1、2号機は営業運転開始から40年を超えて再稼働した「老朽原発」で、3、4号機も来年40年になるが、福井地裁は3月末、訴えを退けた。(中略)

 

 一層の不安をかきたてたのが能登半島地震だ。

 北陸電力志賀原発が立地する石川県志賀町で震度7を観測し、原発にさまざまなトラブルが発生した。

 現地で多数の建物倒壊や道路寸断が起きたことを受け、住民側は「地震による原発事故が起きた場合、屋内退避も避難もできず、被曝(ひばく)を強いられることになる」とあらためて書面を出して訴えた。

 

 これに対し、地裁は「原子力規制委員会において新規制基準への適合が認められ、その審査基準において不合理な点はない」と断じたが、そもそも規制委は、原子炉の状態が国の規制基準に適合しているかを審査するだけで「安全」を保証するものではない。

 しかも福井地裁は「避難が必要になるような事態が起きる危険性は立証されておらず、避難計画の不備については判断するまでもない」と住民の訴えを一蹴した。

 

 しかし「避難が必要になるような事態が起きない安全性が立証されている」という事実がない以上、判断を避ける理由にはなるまい。

 規制委の「適合」を根拠に、深刻な事故は起きないと決め付けているだけではないか。原告側が上訴したのも当然だ。

 

 国は原発から30キロ圏内の自治体に避難計画の策定を義務付けているが、規制委は避難計画を評価の対象外としており、避難計画に不備があるかを判断するのは、まさに司法の役割であろう。

 避難計画は事故の際、住民を放射能被曝から守る「命綱」とも言うべきものだ。それを軽んじるような司法の姿勢には、強い違和感を覚える。

 

(4月12日「東京新聞」朝刊5面・社説より) 

https://www.tokyo-np.co.jp/article/320784?rct=editorial