トレードは私のライフワークの一つであるが、トレードの失敗原因の最大のものは「値ごろ感」というやつだ。
「値ごろ感」というものは、人々が感じる(トレーダーが感じる)とされる、まぁ妥当と思われる価格についての感じ方である。
当然、人によって値ごろ感は違う。現在の値段を高いと思う人と安いと思う人が同時に存在しない事には、そもそもの売買が成立しない。
また値ごろ感は、そのトレーダーがトレードを始めた時期、さらにはそのトレーダーが所有しているポジションの値位置によっても異なる。
具体的な例をあげて考えていきたい。
商品先物、たとえば原油の売り買いをしている人がいたとしよう。
現在の短期的な値動きは80ドルから100ドルのレンジで推移している(現実の原油の値段は60ドルくらいだが、ここでは仮定の話だから)
現在の値段はレンジの中心である90ドルだ。中長期的なトレンドは、日足、週足ともに下降トレンドである。
さあ、あなたならば現在あるポジションをどのようにするだろうか?(ここれはレバレッジや手数料はなく、またトレードの資金は自己資金で借金や信用取引ではないと仮定する)
1)すべて現在の90ドルで売却する
2)まったく売らないで様子を見る
3)半分だけ現在の90ドルで売却して様子を見る
この三択のどれを選ぶであろうか。
私ならば3)を選択するだろうが、たぶん正解は1)なのだろう。
80ドルから100ドルのレンジであるならば、当然レンジを離れた方に当面の値動きは定まるだろう。80ドルを割れたのならば、すぐさま逃げないとヤバいので売り、また短期的に上昇してレンジ上限の100ドル近辺にきたら一旦売り(この場合、100ドル超えがだましではなく上昇していくならば、再び105ドルあたりで買い戻しても良い)、現在の値段よりどっちに転んでも売りなのだから、今まさに売ってしまっても何ら不都合はない。
なんせ中長期的には下降トレンドなのだから、早めにポジションは手じまいした方がリスクは少ないとも言える。
これが正しい選択と思われるが、このような論理的な思考を邪魔するものが、「値ごろ感」である。
この現在の90ドルが、長い下値からの持ち上がりでの90ドルならば、そして買った値が30ドルとか40ドルとかの安値ならば、迷わず売って利食いするだろう。
しかし現在の90ドルが150ドルの高値を付けた後の90ドルならば、そして買った値が120ドルとか130ドルとかの高値ならば、なかなか心理的に損切りしずらいであろう。
つまり安値の間近の90ドルか高値の間近の90ドルかでは、90ドルの値ごろ感が異なるのである。
さらには、どれくらいのスパンで値動きを見ているかによっても異なるだろう。
モノの値段は、債券や証券と違って割高・割安を判断する指標がないのだから、人々が高いと思えば高いし、安いと思えば安いのである。
だから自分の勝ってな値ごろ感で判断すると失敗をすることが多い。