一昨日の酒場でくだらない議論の続編。


 そこに居合わせた女性の発言から始まった。

 彼女は子育て世代の真っただ中という。(そもそも小さな子供がいるのに、呑み歩いているというのもどうかと思うが、これもライフスタイルの多様化だろう)


 その発言とは?

 「政治家は子育て支援の財源とか口にするけど、それならばまず結婚しない人々、未婚の男女に新たに税金を課せば良いのだ」というもの。


 たまたまの事情で子供ができないという不幸なケースはともかくとして、結婚もしないで優雅な独身貴族(これは死語かもしれないが、、)は誠にけしからんというのだろう。

 そんな連中から新しく税金を徴収して、子育て支援の財源にしろという暴論だ。


 この女性の発言に対しては、その場の多くの者が(?)を感じた様子だったが、一人の男性が強くかみついた。


 「好き好んで独身な訳じゃない、結婚できないんだから仕方がないだろう!」

 

 結婚したくてもできない人も数多くいる。

 世にいる多くの男女は、結婚をことさら避けているのではなく、そのチャンスが巡ってこないという意見だ。


 さらに男は激昂して、「だいたいモテないだけでも人生が悲惨なのに、モテて幸せな結婚をしている奴らに、なぜ新たに金を払わなければいけないのか!」とわめきだす。


 そうか。納得する。


 結婚できない理由には様々なものがあるだろう。

 よく世間で言われるような、「現在は非正規社員の若者が多くなり、経済的に結婚していくことが困難だから」という話は、嘘だと思う。

 将来的なライフプランとして所帯を持つことへの経済的な不安はあるにせよ、それぞれが別々の部屋を借りて別々の家計で生活を営むよりも、ともに共同で生活した方が経済的にはメリットが大きいことは明白だからだ。


 現代社会で結婚を困難にしている最大の理由は、「かつての結婚は家と家とのつながりを前提とした、お見合い結婚が主流だったのに対して、現在では競争原理による自由恋愛での恋愛結婚が主流となった」ということだろう。

 できちゃった婚とかを別とすれば、結婚はまず恋愛関係が前提となる。


 そして競争原理による恋愛市場は、モテるとかモテないとか、そもそも個人それぞれの好みとかフィーリングとかに左右されるものだ。

 それはまさに個人の感性の問題であって、行政とかが何かの方策や制度をはさめる余地などはない。

 ゆえに、「嫌な相手と強制的に結婚はごめんだ」とか「結婚したくてもモテないから恋愛関係すら築けない」とかが、結婚を阻害する最大の理由となるのだ。


 そして離婚率も上昇していく。はじめの恋愛感情が消滅したら、苦痛な結婚生活を我慢してまで続けていく必要はない。新しい伴侶を探した方がよい。

 さらにはモテる奴ら(男女ともに)ならば、バツ1、バツ2にでもへっちゃらで、まるで芸能界のように新しい相手を見つけて再婚していくのだ。

 なんせ世の中には結婚したいという人々が溢れているのだから。


 そう!

 現代社会に蔓延する「恋愛至上主義」の考えこそが、結婚しない男女を多く生み出している諸悪(?)の根源なのだ。


 二人の激しい論争で、その場の空気が険悪になってきた。

 ここはコミュニケーションを生業とする政治家として、何とか話をうまくまとめなければまずい。

 私は、両者の顔を立てるために、以下のように話した。

 「独身者への未婚税という考え方もあるけれど、現在でも税制上は配偶者控除というものがあって、結婚している者にとっては有利な仕組みになっています。ただ将来的にはこの配偶者控除も見直される方向での意見も強くあります」というものだ。


 こんな話で納得したかどうかは分からないが、現代社会は多様な意見が交錯するものだ。