現在はインフレ傾向にあるのだろうか、それともデフレ傾向にあるのだろうか。


 バブル経済の崩壊後、長きにわたって日本の国はデフレ経済に悩まされてきた。

 当然、政府もこのデフレ脱却に向けて、様々な手を打ってきたのだ。

 その長きにわたる経済政策の結果(もちろんそれだけではないが)、膨大な国家の借金を積み上げてきた。

 最近でも、アベノミクスによる異次元の金融緩和により、デフレ脱却が叫ばれてきたのだ。

 確かに株式価格は上昇したが、それでは巷での経済状況はどうか。

 相変わらず物価は上がらず、GDPも増加はしない。不況とは言わないまでも経済は停滞している。

 つまりはデフレへの懸念がぬぐえないのだ。

 アベノミクスにより円安誘導が行われ、円安により原材料や輸入価格が上昇して、これはインフレの懸念がとも心配された昨今だが、やはり現状はインフレどころか相変わらずデフレなのだ。


 これは何も日本だけのことではない、世界的なことだと思う。

 日本同様、アメリカもEUもせっせと金融緩和でお金を市中にばら撒いても、その過剰流動性によりインフレなんかにはならないのだ。

 先進各国においては、むしろデフレが懸念されているのだ。

 経済が元気だった中国も、最近赤信号がともり始めている。莫大な余剰生産能力や過剰な不動産投資などを見ても、この国が日本よりさらに大きなスケールでバブル崩壊後の状況に陥るのではないかとの懸念もある。


 全世界的なデフレ時代の入り口に、私たちは立たされているのではとの恐れを感じる。


 しかし待ってくれ。

 今まで当然のこととして考えられてきた前提、世界人口は増大する、地球の資源が限られている、途上国を先頭に産業は発展する、情報化社会で人々の欲望は増大する、よってインフレに突入する。しかも各国がお金を印刷して通貨の価値を希薄化している。さらにインフレに突入する。

 この前提が間違えであったというのだろうか。


 話が複雑化するので、日本の国に限って考えみたい。

 お金の流れは、国家、国民、企業の3つの分野で動くとしよう。これが単純化されたモデルだ。

 国家(政府)の部門は財政赤字なのでお金は減っている。

 国民の分野、人々にお金は多く出回って、人々は潤ってもいない。(ただし国民の金融資産自体は増大している、つまりはあるところにはお金はあるのだ)

 企業の分野、数多くの企業が最高益が出しており内部留保もかなりある、つまり潤っているのだ。(ただし共産党などが大企業を批判するのは見当違い、これからのグローバルな競争、世界的な企業再編のためにもこの分野のお金は大切である)

 そして中央銀行は金融緩和でお金を吐き出している。そして実質的なゼロ金利が続いている。

 これが大まかな現状だろう。

 さらに付け加えるならば、世界的には人口は増加しているが、日本では人口は減少している。この人口減少の流れは簡単にはとめられないだろう。

 人口が30%減るということは、30%分の住宅も不必要になるということだし、30%分の自動車もゴルフ場も温泉旅館も不必要になるということなのだ。

 しかも高齢化が進展しているので、その不必要な%はさらに大きなものとなろう。


 バカな連中は、この状況に対して、金を貯めている富裕層から税金で金を取れとか、大企業から金を徴収して、貧困しているところに回せとか言うが、それは愚かな発想であろう。

 そんな政策を推進したら、お金そのものが日本から逃げていくだろうし、半ば強制的ということならば、それは社会主義(共産主義)になってしまう。

 いくら内部留保が莫大にあろうとも、企業に強制的に設備投資や雇用を拡大させることはできないし、国民に強制的に消費を押し付けたりはできないのだ。


 では、どうしたらデフレ傾向を転換させることができるのか?

 企業や金持ちに金を使わせ、市中に金を循環させることができるのか?

 強制的に金を引き抜くのでなければ、お金を保有している状況は不利である、モノに変えたり消費したりした方が有利である状況造を創り出さなければならない。

 そうすれば水が高いと所から低い所へと流れるように、お金は自然と廻っていくだろう。

 まさかゼロ金利をマイナス金利(もしくは財産税導入)にはできないから、さらなる金融緩和を大規模に推進して、通貨の希薄化を促していくしか方法はないだろう。今よりもどんどん紙幣を増刷しまくるのだ。

 異次元の金融緩和ではなく、超異次元の金融緩和をやって欲しい。


 それによりまた円安にはなるだろうが、これは世界的な状況なのだから壊滅的なことにはならないだろうし、オリンピックを目前にしてさらに多くの外国人観光客が訪れ、爆買いも増えるだろうから、それはそれで良いことだろう。