円安の影響もあるのか、最近では「物価上昇」に関する話が多く見られるようになってきた。その論評の多くが、物価上昇で生活が苦しくなるとかどうとか、といったような物価上昇を悪玉のようにしたものだ。

 確かに多くの場合は物価上昇は、一般の消費者にとっては悪である。そしてすべての人々は消費者であるのだ。(生産者になる者は労働者に限定されるが、消費者になる者は病人だろうが、プー太郎だろうが文明社会で生きている以上は、すべての人は消費者にならざるをえない)

 だから物価上昇は悪く言われて当たり前なのだ。また、これは増税などにも当てはまる。


 にもかかわらず、物価上昇について正々堂々と文句をつけることに違和感を感じるのは、「物価下落=デフレ進行=悪」という固定観念が強すぎるからだろう。

 確かに日本の国はバブル崩壊以降、長くデフレに苦しんでいた。その後遺症からか、物価下落は悪者になってしまったのだ。

 政治の議論でも、物価上昇の目標値とかいう、本来ならばおかしな話までまかり通ってしまうのだ。


 さらには、大企業を中心に内部留保ばかりに夢中で、働く人々の賃金が上昇しないからダメだとかの意見も出てくる。そりぁ、賃金だって上昇した方が良いにはきまっているが、それで問題が解決するとは思えない。大規模な公共事業やばら撒き政策などは論外である。

 一部の貧困層にはありがたい話だが、そのような政策では真の問題解決には行き着かないだろう。

 スポンジに水が吸収されていくようにお金が消えて、財政が悪化するだけの話だ。人々に金がないのではない(確かに一部の層には金がないが)。日本の個人資産の伸びを見れば一目瞭然だ。金はあるのだ。だから株式市場は上昇している。

 格差社会とか言われているように、ほんの一握りの富裕層だけの話ではない。平均的な人々でも、そこそこ小金は貯めているのだ。


 なぜ、デフレになるのか、それは需要が不足しているからだ。単純に言えば人々が欲しいモノやサービスがないからだ。

 そして、需要や人間の欲望は無理に作り出すことはできない。

 これは今に始まったことではない。そもそもバブル経済自体が、需要な不足しているところに、無理に内需拡大とかやっていこうとした矛盾による傷ではないか。


 どうしたらよいのか。技術革新により新しい需要を開拓しつつ、国際競争力を高めて世界から稼いでいくしかないのだ。

 国内の経済指標を気にしながらチマチマとした政策議論をするよりも、よほど力強く夢のある話ではないか。