先日も紹介した作家である、中村文則氏の作品である。これも暗い。
「遮光」 中村文則著 新潮文庫
これは野間文芸新人賞を受賞した時の、若い彼の初期の作品である。
この作家は、この後に大江健三郎賞や芥川賞なども受賞している。
それだけ文学的な評価は高いのだろうが、何せテーマや描写が絶望的なほどに暗いのだ。
上記の作品のあらまし。
孤独な青年が恋人を交通事故で失い、彼女のことが忘れられなく、事故後の死体から指をもぎ取り、瓶の中でホルマリン漬けにし、肩身はなさず持ち歩く。彼女との平凡だが典型的な幸せを惜しみながら、周囲とも軋轢を起こしながら、さらに孤独感を深めて、最後には瓶を開けて、その中の指を口に、、、
とここまで書いてきて、改めて思う。こんな作品を自分のブログで紹介するのも、はたしてどうかなぁと。
あまり同時代的な共感を得るような作品ではないことは確かだ。
それでも惹かれてしまうのは、文学が文学たるゆえんか。