トレード的な思考方法とは、「分析しない、予想しない」というものだと書いたが、これを読まれている方々は、この私の指摘を訝しがるかもしれない。


 なぜ価格の動きに関して、分析して将来を予想しないでトレードができるのか?

 あなたの指摘はトレードにおいては真逆ではないか?

 ほとんどの人々はそう思う、いや確信しているだろう。


 トレードには、ファンダメンタルズを軸にトレードをする方法と、あくまでも価格の動きだけに注目をしてテクニカルを軸にトレードをする方法の二通りが存在する。

 これは好みの問題でもあるが、すべての要因は現在の価格に収斂するという考え方のテクニカル手法の方が、需要と供給を考慮するファンダメンタルズ手法よりも、より高いパフォーマンスを上げているという歴史的な事実により、現在ではテクニカル分析が主流となりつつある。

 それにしてもテクニカルを軸にする場合でも、その分析における様々な手法をきちんと検討してトレードをする、つまりはテクニカル分析により将来の価格を予想する方が、正しいトレードではないかと、みなさんは思われるだろう。


 否! その考えこそが誤りなのだ。


 よく考えて欲しい。トレードにおけるテクニカル分析の指標など何一つ知らない子供に、自由気ままに売買をさせてみたとする。手数料などを考慮しなければ、当然その成績は五分五分だろう。

 またたとえ子供とはいえ、罫線を眺めれば、何とくなく価格が上昇するか下落するかぐらいはわかるので、その成績は五分五分とりも若干は良くなるだろう。

 しかしなぜ私たちの多くは、子供にも劣るパフォーマンス、五分五分よりも以下、つまりはトレードで負けてしまうのだろうか。


 それはトレードの予想的中率が50%よりも高くても、利食いと損切りのタイミングを誤るからだ。

 つまりは「欲と恐怖」に負けているのだ。


 トレードの勝率などは、本来はどうでもよいのだ。確かに驚異的な分析力により予想の勝率を上げることは重要だ。

 しかし、それよりも重要なことは、先にも指摘した利食いと損切り、そしてトレードを仕掛けるタイミングなのだ。

 予想の勝率がたとえ30%でも、全体として資金が増えていれば良いし、逆に予想の勝率が90%以上であっても、間違えたわずか10%のトレードで壊滅的なダメージを負ってしまい、資金がマイナスに沈んでしまうならば意味がないことだ。


 もう一度考えてみよう。トレードをする目的とは何か。当然「お金を儲けること」であろう。

 トレードの目的が、自分の分析の正しさや予想の勝率を上げることによる自己満足ではないはずだ。


 もちろん、私は「分析」「予想」、そしてそのための様々な研究を無価値と言っているのではない。

 それよりも大切なことがあると言いたいのだ。

 分析や予想にこだわるあまりに、そのもっと大切なことを忘れがちであるのが間違いなのだ。