ここ数日の間、日本の長期金利が上昇を続けている。アベノミクスの弊害が若干現れ始めたということか。

 長期金利の上昇といっても、もともとからして最低の低い低い水準なのだが、これを利払いの観点から考えると、とんでもないことになる。

 0.4%そこそこのものが、0.9%に上昇しただけでも、上昇分はわずか0.5%でも、その率からすれば2倍以上ということになる。単純には考えられないが、金利が2倍ということは、その利払いも2倍ということになるのだ。

 当然、赤字国債の利払いも拡大していくということだ。消費税を1%引き上げることで税収は約2兆円増えると言われている。3%の消費税引き上げで、6兆円から7兆円の税収増が見込まれる。

 しかし前述のように金利上昇によっての利払いが拡大すれば、こんなちっぽけな税収増などご破算になりかねない。これが現実である。

 とは言っても、そもそも国債の発行自体が、通貨の発行増で帳尻を合わせている現状、あまり関係はないのかもしれない。

 言葉は下品で良くないが、犯罪者が強姦を犯しておいて、帰り道に痴漢もするようなものだ。



 しかし、これは国の問題、国家財政がどうのという問題に限定されたものではない。多くの善良な国民が組み込んでいる「住宅ローン」にも影響する実際的な問題なのだ。

 金利上昇は当然のことながら、変動金利を採用している住宅ローンの利払いにも影響を与える。今までが信じられないほどの低金利だったので、多くの人々の感覚がマヒしてしまっているが、正常な金利水準を想定するならば、現在の住宅ローンの支払いが2倍、3倍に膨れ上がるなんてこともおかしくない。


 だいたい「現在住宅ローンを組んで新築マンションを購入すれば、月々のお家賃より割安です、今が住宅の買い時!」なんていう掛け声のもとで、どんどん住宅ストックが供給されていった。「住宅ローン減税」なども飛び出し、官民あげての「住宅を買え!買え!」の大攻勢であった。

 高度成長時代も終わり、我が国の総人口も減少しているという時代に、まさに時代に逆行した風潮が形成されていたのだ。ちんけで安っぽいマイホームの夢を重ねつつ。これは罪なことだ。


 たまたまの低金利時代に惑わされて、経済的な能力の乏しい人々に住宅を媒介にした借金を負わせる。これじゃ、どこかの国のサブプライムローン問題と同じではないか。

 それが社会問題として表面化しなかったのは、たまたま幸運にも(実は作為的に?)金利水準が低く抑えられていたからに過ぎない。しかしこれからは都合よくはいかないだろう。グローバルなマーケットは残酷にも正直でフェアであるからだ。


 小金を持ったものは、「けっして住宅ローンなどでマンションを買わないで、低位水準の優良株を買っといた方が良い」とは、昨年の夏に私がこのブログで書いたことだ。

 後者の株式に関しては現実的な正解を見たわけだが、前者の住宅に関してはこれからだ。



 「そんなこと言ったて、私は株式より住む素敵な家やマンションが欲しい!」って、そればらば住宅ローンの破綻により競売などで、今後大量に市場に出回るであろう「安い掘り出し物の物件」を買えばよいだけのことだ。中古物件でも築浅ならばリフォームで充分に甦るしね。