久しぶりに文章を書いている。最近は多忙なせいか、まとまった時間をあてて文章を書くことが減ってきた。文章を書くという行為は、自分の中の漠然とした思考をまとめるためには必要な行為なので、考えや思い付きは、なるべく文章として具体化していく方が良い。


 さて、今回のテーマは巷で話題の「アベノミクス」という経済政策について。三本の矢がどうのこうのと言っているが、とどのつまりは金融緩和による流動性の供給、通貨の大量発行によるインフレ誘導ということだろう。

 とても不思議な政策だ。確かに極端なデフレ経済から脱却するための方針としては正しいのだが。

 では、どこが不思議と思わせるのだろうか。

 そもそも古今東西、歴史的に見ても、一国の政府がインフレを退治するための苦労をすることはあっても、インフレに誘導するための苦労などはありはしない。

 なぜならば、インフレにしたければ単純明快、通貨を大量に発行すればよいだけの話だからである。第一次大戦後のドイツ、最近のジンバブエ、古くはローマ帝国(この場合は貨幣ではなく、金貨・銀貨の含有量を薄めた)にいたるまで、インフレ(国民生活を破壊して富を一瞬にして奪う津波)を起こすことなどいたって簡単なのである。

 インフレ誘導に向けて通貨を膨張させる、これまさにアベノミクス。


 インフレによって国民の実質的な富を強奪する(これは隠れた増税とも言えるのだが)ような政策は、どこの国も採用しようとすれば簡単にできる。

 しかし実際は行わない。国民生活を考えての立派な為政者あってのことか、いやいや、もしそのような政策を取れば、まず何よりも自国通貨が暴落して経済自体がガタガタになるからだ。


 アベノミクスが始まって、まず円が下がった。円安傾向になった。しかしこれについても円安大歓迎の気分が蔓延しているのだから、まず問題なしということか。


 よくよく考えてみると、不思議な政策だ。

 それだけ世界の富が日本に集中しているということなのか。もしくはアメリカや欧州の傷がよほど深いということなのか。