規制緩和を良しとするか悪とするかは、それぞれの立場によって当然のことながら異なる。生産者やサービスの提供者の立場からすれば、規制緩和によって競争が激化するので悪ということになるし、消費者の立場からすれば、価格競争やサービス競争が起こりやすいので善ということになる。

 私は生産者の立場より消費者の立場を重視した方が、結果的には生産者の競争力が向上すると考えるので、ある程度の規制緩和はどんどん推進すべきとの考えである。


 かつてバブル時代は駅前のタクシー待ちに長蛇の行列ができていた。現在では逆に駅前には客を待つタクシーがわんさか滞留している。

 これによって昔よりも待たずにタクシーをつかまえることができるので、消費者としては良い状況だが、タクシーの運転者(サービスの提供者)からすればたまったものではない。

 昔よりも不景気ということもあるのだろうが、やはり客待ちのタクシーが増加した大きな原因は規制緩和によってタクシーの営業台数自体が増えたことによるものだろう。

 ここで本来の市場原理からは、サービスの提供者の方がサービスを受ける客よりも多いのであるから、サービスの価格が低下して、その結果としてどこらかの地点(価格)で両者は均衡していくのが自然な姿であろう。

 しかしそのようにならないのは、タクシーの料金が規定により定められており、各タクシー運転者が自由に決めることができないとういう現状はあるからだ。

 だから客を待つタクシーが数多く滞留してしまうのである。


 たとえばこのようなケースを想定してみよう。学生のカップルが駅でバスを待っている。なかなかバスは来ない。タクシーを使えば710円だが、バスだと2人で400円だ。だから二人はバスを待つ。

 だがタクシーの料金が現在の三分の二程度、つまりは450円だったら、どうだろうか。あと50円よけいに出せばバスを待たずともタクシーに乗って早く行ける。当然、若い学生のカップルはタクシーを利用するだろう。このようにして新たな需要が生まれるわけだ。

 客単価が低下することで、タクシーの運転者側すれば良くないことだが、漫然と長時間にわたり客を待って無為な時間を過ごすよりも、客の回転がきいて総売り上げは増加するのではないか。

 結果としては良い状況ではないだろうか。